事業化から企業立地まで、”結果”を出し続ける官民共創プロジェクト『おためし立地チャレンジナガノ』|チャレンジナガノ2022 DEMODAY #1

長野県が主催(運営事務局:株式会社Publink)する、長野県内の市町村が抱える課題を、多様な企業とのオープンイノベーションによって解決する取り組み「おためし立地チャレンジナガノ(以下「チャレンジナガノ」)」。

60者の企業から応募があった2021年度(チャレンジナガノ2021 DEMODAY特集はこちら)から引き続き盛況な本取り組みは、2022年度も51者から応募があり、新たに多くの官民共創プロジェクトが誕生しました。

2023年3月7日に開催された『チャレンジナガノ2022 DEMODAY』の様子をレポートしていきます。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。
※記事内の肩書などは、イベント当時のものとなります。

官×民の68件にのぼるマッチングを生んだチャレンジナガノ第2期

『チャレンジナガノ』は、長野県が主催するオープンイノベーションプログラムであり、2022年度で2期目を迎えた。そして、すでに本記事の執筆中(2023年04月時点)に3期目の運営事務局の公募が行われている。

本プログラムは、長野県内の市町村が持つ”地域課題・資源”と民間企業の”ソリューション・ノウハウ”をマッチングさせ、新産業の創出、雇用の増加、付加価値の高い先進的ビジネス創造を起こしながら、最終的には企業立地にまで繋げることを目的としている。

2021年度で生まれたマッチングでは、実証段階を超えて事業化に進んでいるケースも誕生し、現在実証段階中のものも事業化一歩手前のものが数多くあるという。そして、プロジェクトを通じて、企業立地も着実に実績が積みあがっている。

※出典:長野県公式サイトのキャプチャ

これはチャレンジナガノ第1期に関する記事(リンク)でも、似たことを挙げたが、旧来的な自治体主催のオープンイノベーションプログラムの多くは、悪い意味で『打ち上げ花火』のようだった

打ち上げた時は綺麗に咲くが、そのあとは一抹の寂しさと何もない空間が拡がる。花火のように良い思い出になれば良いが、予算と人を掛けて『ただ、実証(打ち上げ花火)を行っただけ』では、関係者には徒労感が残り、当初は多少の広報効果があっても、中長期的に見れば「結局、実にならない取組をしている」と逆効果になっていく。

いわゆる『PoC疲れ』と言われるものだ。

しかし、近年、その様相が変わりつつあるのを幾つかの自治体主催のオープンイノベーションプログラムの当事者の声を伺っていて感じられる。

その大きな要因は、『ただ、予算をつけたらいい』ではなく、『自治体が、企業に丸投げせず、同じ熱量で事業に向き合う』という姿勢の変化にあるように思う。もちろん、姿勢だけでなく、その体現として行動自体も変わってきている。

「このチャレンジナガノでは、企業の皆さまのビジネスチャンスを拡げていくことが主眼となっています。(中略)企業の皆さまのニーズを聴くことから始まって、それを踏まえて地域の皆様への繋ぎ込みが出来ると思っています」(長野県 産業立地・IT振興課 課長 室賀 氏)

それは、チャレンジナガノにおいても同様に見受けられた。そうしたものに結果が伴っているかは、2022 DEMODAYを見ると特に感じられる。

分かりやすいところでは、応募企業数、提案数、マッチング数や応募企業の多様さ。そして、DEMODAYの最終パートで昨年度の第1期で行われたプロジェクトの担当者たちも参加し、高い熱量で話す様子とその内容を通じて、その実感が出来た。

チャレンジナガノ 2022 DEMODAYの様子

チャレンジナガノ 2022 DEMODAYで発表された各プロジェクトについて、6つの記事に分けて、発表内容を詳細なレポートにしているので、ぜひご覧頂きたい。

自治体と事業者の熱量、それぞれのストーリーから、”要点を知っただけ”では感じられない、官民共創の重要なコンテキストが見えてくると思う。

“若年層のファンづくり”を目指す『中野市』

■課 題:若年層をターゲットとしたファンづくり
■事業者:XYZ、おてつたび
■記 事https://publingual.jp/archives/60094

“地域企業の人材不足解消”を目指す『小諸市』

■課 題:地域企業の人材不足解消
■事業者:One Terrace、アンテナ
■記 事https://publingual.jp/archives/60122

“地域資源のブランディング”を目指す『大町市』

■課 題:地域資源のブランディング
■事業者:Japan Navi、アンテナ
■記 事https://publingual.jp/archives/60150

“キラーコンテンツの創出”を目指す『下條村』

■課 題:関係人口・集客に向けたコンテンツ強化、情報発信
■事業者:Blue Kettle、アンテナ
■記 事https://publingual.jp/archives/60175

パートナー枠(※)自治体の発表

■参加自治体:長野市、岡谷市、飯田市、千曲市、辰野町、松川町
■記 事https://publingual.jp/archives/60202

※パートナー枠…マッチング企業と市町村の課題解決の取組を市町村が主体的に実施する枠。県は必要に応じサポートを行う。

昨年度プロジェクトの進捗発表

■参加プロジェクト:白馬シャトル(白馬村)、辰野オンデマンドタクシー(辰野町)、SUWAプレミアム(諏訪市)
■記 事https://publingual.jp/archives/60238

自治体も、企業も、リピーター続出

面白い例も幾つかある。そのうちの分かりやすいものを取り上げたい。

前述の発表内容を見て、『アンテナ』という企業名が頻出しているのが分かる。ちなみにアンテナ株式会社は、第1期に参加しており、そのプロジェクトは事業化に至っている。この会社は、チャレンジナガノをきっかけに長野県内へ営業所も出している。それ以外にも第1期と同じ自治体、企業の応募が散見された。

そう、チャレンジナガノでは、リピーターが非常に多い

ここから満足度が高いということも窺い知れるが、その他にもチャレンジナガノを通じた地域へのヒアリング、(企業に向けた)プレゼンテーション支援などによって、地域課題の明確化が進み、「こうしたことに取り組むことで更に良い効果が出せる!」という道筋を見出した自治体が増えているからではないだろうか。

そして、それは事業者にとって、官民共創のノウハウや経験、熱量やスピード感を持った自治体の増加であり、ただの受発注の関係から、共創パートナーとして手を取りやすい相手が増えているということになる。結果として、プロジェクト推進、横展開のしやすさといった事業者の求める結果を生み出しやすくする。

チャレンジナガノは、回数を重ねるほどに長野県全体のイノベーションの土壌やポテンシャルを底上げしている。良い土壌には、良い作物が実る。

そう感じさせられるDEMODAYの内容だった。

すでに2023年度のチャレンジナガノも動き始めている

これは第1期の記事を執筆時にも書いたが、第3期(2023年度)のプロジェクト準備も進み始めており、すでに本記事の執筆中(2023年04月時点)に運営事務局の公募が行われている。

最初にあげたマッチング数を見て頂くと分かるが、一般的なオープンイノベーションプログラムに比べても、チャンスは広い。

「我々としては、本日発表頂いた方のサポートを全力で行ってまいります。(発表の中で)立地のご提案も頂いているので、更にサポートをさせて頂きます。(中略)来年度は今年のチャレンジナガノよりもパワーアップしてやっていく予定です!」(長野県 産業立地・ IT振興課 課長 室賀 氏)

もし、この記事を読んで、チャレンジナガノに興味が湧いた方、ぜひ今後も長野の取り組みに注目して欲しい。


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