「自分の辞書を作る」、「腹落ち」…。デキる公務員のビジネス観|ファーストキャリアとしての公務員 #3

マイナビ✕人事院で「ファーストキャリアとしての公務員」にフォーカスし、元官僚、元自治体職員で起業家であるPublink代表 栫井氏Filament代表 角氏をゲストに(ファシリテーター:人事院 橋本氏)公務員の可能性と限界を語り尽くした。

その様子をレポートする。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、主催者の了承のもと、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。

(良い意味の)変態公務員はなぜ生まれるのか。

人事院 橋本氏(以下、橋本氏):質問に応える前にお二人にお伺いしたいのが、起業されて色々な方々とお付き合いする中で、「公務員の人ここすごいな」と思うことがあればぜひお伺いしたいと思います。

公務員の強みを客観的に他の業種と比較して感じる部分はありますか。 

株式会社Publink代表 栫井氏(以下、栫井):公務員だから皆すごいというわけじゃなく、公務員の中で目立ってくるすごい人って、ネジが1本、2本と言わず10本ぐらい外れている人がいますよね。

利益を追求しないとか、ノルマがないからこそ、ある意味自由度があるんですね。自分をどんどん変人にする自由度があって。

なので、公務員の中の変態って、マジで物凄く変態だなって思います。

橋本:それは良い意味での変態ですね。

栫井:はい。良い意味での変態です。  

株式会社フィラメントCEO 角氏(以下、角):僕も「それどうやって決裁通したんですか?」というのが全くわからないことをやってる人がいますね。

僕が公務員をやっていた時に、自分で言うのもあれですけど、はみ出し公務員だったわけですよ。はみ出し公務員の横のつながりがあって、大阪市は僕なんだけど、「岐阜はこの人」とか、いろいろあるんですよ。

(良い意味で)めちゃくちゃなことをやってる。松江の人だと『Ruby City MATSUE』というようなことをやっている人がいたり。でも、その人にしかできないということで、現場でも頼られているんですよね。

だから、変態。

さっきも言ったいい意味での変態です。そういう人たちが活躍の場を広げつつあるというのは、間違いないなと思います。 

あと、僕がこの仕事をしている人間のなかで誰よりも尊敬している人って、前職の僕の同僚なんですよね。本当にこの人は天才だなと思う人なんです。

その人は僕が障害福祉をやっていた時に、チームメンバーで自立支援法という非常に大変な業務をリードしていました。その人と同じくらい賢い人って、ほぼ会わないですね。バランス感覚、相手のことを思いやる力、そして実行する力ですね。

実行する時もちゃんとスケジュールを立てて、きっちりと前にグングンと進めていく。こんなことができる人って、ほぼいないだろうなと思う人です。それって、現場の中で培われているんですよね。

その方はちなみに高卒だったんですよ。高卒なんだけど、でも、そんな学歴なんかじゃないんですよ。それをやる力というのは、そういうものではなく、思いを持っている人に宿るんでしょうね。

橋本そういう突然変異って、公務の職場だから起こるんですかね

それとも本人が持っている資質なんですか。もし資質だとすると、そこは結構つらいじゃないですか。でも、もし職場がそういう変態を促すのであれば、これは面白い職場ですよね、公務って。

これはどちらだとお考えですか。 

栫井:角さんのおっしゃるとおりで、規則や既存のやり方から逸脱すると怒られるかもしれない。でも、そういう中だからこそ、逆に振り切りたいというのは出てきますよね。厳しいご家庭でゲームを禁止されているお子さんほど、大学生になった瞬間、めっちゃゲームしたりとか。逆に振り切る人が増える気がします。

:なるほど。制限があればあるほど、人間が鍛えられるというやつですよ。北風がバイキングを作ったという話ですよ。

栫井:確かに。角さんはバイキングということですね。

 :いやいや(笑)。

いろんなすごい人がいますけど。変態公務員と言われるような人たちは、制限されているがゆえに、そこをどうやって乗り越えるか。ハックするかとか、そういうことを考えたんじゃないかなと思いますね。

橋本:なるほど。確かに制限があるからこそ、いかにその枠をうまく超えるかみたいな。   ちょっと小賢しくなっていきますね。

栫井:橋本さんもですか。 

マイナビTV MC 大久保氏(以下、大久保):橋本さんもそうですよね。

 栫井:新しい変態です。

質問「今からでも公務員を目指せますか?」

大久保:たくさん質問を頂いています。「今からでも公務員を目指せますか?」。

橋本:公務員ですね。そこは幸い、公務員は試験さえ合格すれば権利は取れるんですよね。

今年の採用試験はもう3月から申込みが始まります。費用は切手代ぐらいなので、殆どノーリスク。受けるだけ受けていただいて、「残念でした」だったら、何が残念だったのかをちゃんと分析して、来年リベンジすればそれはそれで十分だと思いますね。

年齢は一応、上限はあります。でも、受かればいいんです。こんなフェアな入り口はないと思いますね。 

大久保:試験勉強ですね。

橋本:別に時間かけて間に合わせればそれですみますし、年数かかったら、かかった分のプラスアルファを見せて、内定を取ればいいんだと思いますね。

私は3年かかってます。

質問「大学時代にやっておいたこと、やっておけばよかったこと」

大久保:「大学時代にやっておいたこと、やっておけばよかったこと」。

橋本:今の学生にぜひやってほしいことはありますか。

栫井:私は大学生向けのワークショップで企画やアドバイスをしたり、キャリアメンタリングをしたりもよくやるんですけど。

学歴の高い大学の生徒ほど、ロジックだけで物事を考えるんです。質問にもたくさん来ていると思うんですけど、「こうした方がいいですか」「こうすべきですか」という義務的な書き方をすごくするんですけど。それって、皆さんそれを口頭で人に喋っている自分を想像してほしいんです。

多分、あんまり笑顔で話していないと思うんです。「こうしなきゃいけないかな」とか。

大久保:笑っていましたね、今。栫井さんはいつも笑っている。

栫井:笑っちゃうんです、どうしても。例えば、公務員を目指すにしても、勉強が間に合うかどうか以前に、公務員はワクワクするというところが一番大事。

他の会社だってそうで、例えば大学院に進学するのもそうだと思うんです。その人生にワクワクするか。ワクワクするんだったら、勉強とか能力を高めるとか、後付けで何歳になっても絶対、成長するので。まずは自分の中でロジックだけではなく、本能や感情、感性といったところで、「本当にそれをやりたいの、しっくりくる」といったところを、特に目指してほしいです。

それがしっくり来たら、勉強の効率なんて倍以上に上がると思います。ぜひまず自分の中でワクワクして友達に今後、どういうキャリアなのと笑顔で話せるようなものが、自分の中で腹落ちできているかどうか。ぜひ見てほしいなと思いますね。

大久保:確かに。角さん、どうですか。

:僕、大学の時に先輩から言われて。今でもこれは本当に役に立っているなと思っているのは、「自分の辞書を作れ」と言われたんですよ。

だって、さっきの栫井さんの話にも出てきたけど、決まった答えを探したって意味なんかないんですよ。自分なりの答えなんですよね。

例えば今日、「行政とは」という話をしたじゃないですか。あんなの誰からも教えてもらった話ではないんですよね。自分が思って、自分が耕して、発掘したものなんですよ。そういうことですね。「○○とは」という言葉の定義、自分なりの辞書を作っていくのが、大人になるということなんだ、ということを言われて。

だから「○○とは」ということに対して、自分なりの答えをちゃんと自分で出せるように考える、というのはやっていて。それが学生時代からの癖としてはすごくよかったと思いますね。ぜひお勧めしたい。

橋本:それは私も現場に出てすごく思いますよね。

自分の中で腹落ちしない言葉って、使っていても本当に空虚なんですよね。行政の定義もそうで、教科書的には行政控除説というのがあるんですけど、クソくらえですよね。

「行政とは、司法と立法を除いたもの」という説明なんですけど、そんなのありえないですよね。行政という仕事である以上、何かしらの仕事を説明する言葉があるはず。それは人によって経験してきたもので違うんですけど。そういった言葉の中から皆さんが行政って、こういうものなんだろうなと自分の中で理解しておくと、その人は自分の言葉を持っているので、面接でも強いですよね。

:自分の言葉で喋っていない人って、すぐわかりますからね。自分でその言葉、そのロジックに腹落ちしていない人は、人の心を絶対に打たないです。

橋本:そうですね。だから教科書でもダメだし、役人のポンチ絵ではもっとダメなんです。

栫井:全部詰め込んだだけという。

大久保:就職活動として、それは全般的じゃないですか。学生の皆さんは自分の想いや自己PR、志望動機、答えを求めちゃう。でも、それって皆さんの答えなんですかというところ。

自分の言葉じゃないからうまく言えない。

学生時代は、問題があって、答えがあったから、正解ってあったんですけど、就職活動になると突然、正解がなくなって。。。自分の言葉で語りなさいと言われても、今までやってきていないからどうしようと、立ち止まっちゃう学生がすごく多くて。

それは私たち大人がこれでいいんだよ、ということをもうちょっと言ってあげたいなと思ってるんです。「自分の言葉で言うことが大事だよ」とか、「自分の考えを持つことが大事だよ」ということも含めて、「自分の辞書を作る」。。。まさに先ほど角さんが言ったそれですよね。

自己PRって、全員同じ答えじゃないですもんね。今まさにこの時期にすごく囚われている学生は多いと思います。

:そうです。何かの本で読んだ答えを出さないことですよね。何かの本で読んで、それが「誰それがこう言っていました」。それはそれでいいんですよ。

それから自分がどう思ったのかを聞かせてほしいんですよね。自分の心を動かすということを、普段からやっていない人がすごく多いなというのは、逆に民間に出てから思ったりします。

大久保:そうですか。

:自分の心を動かす何かの答えを探している時に、人間の心って動かないんですね。

自分で答えを作り出そうとしている時に、いろんなところを見て、いろんな人の気持ちになって、そうやって心を動かすことによって初めて自分の中の答えが放り出されてくるところがあるんですね。

そういうことをやるためには、いろんな人の気持ち、立場になってみる。腹落ちをして、自分で率先して行動してみるとか。そういうなかで自分の気持ちが高ぶる部分もあるし。相手の気持ちに寄り添えるものがある。

大久保:チャットで「正解がないことはよくわかりますが不正解は割とあるのがつらい…」と頂いています。

:うまいこと言いますね(笑)

でも、「不正解だと思うのは誰なのかな」と思いましたね。ご自身で不正解だと思っていても、周りの人は不正解ではないと思っているかもしれないですよ。

橋本:そうですね。正解がないって、誰かにとっては正解、一番ベストかもしれないので、そのベストを探せばいいんじゃないですか。

:そう。自分の辞書なんだから。

大久保:確かに。そして、ご質問を頂いています。

「タコツボ化しないというお話はたくさんありましたが、そういう人たちの中でモチベーションを保つためにはどうすればよいと思いますか。あと、ご自身はこうしてきたということがあれば教えてください」ということです。

栫井さん、どうでしょうか。 

栫井:タコツボ化の中でどうモチベーションを保つかですよね。

大久保:そういう人たちが周りにいて、でも自分はそうしないんだよ、というところで何か意識されたこととか。

栫井:私の場合は、ロールモデルがうちのおじいちゃんなんですよね。

人生で一番尊敬する人が僕のおじいちゃんで、鹿児島で栫井グループという会社を立ち上げて、800人ぐらい従業員がいて。

鹿児島出身の方には「鹿児島ベスト電器の社長だよ」と言えば一発で通じるんです。親戚も鹿児島中央駅の前に銅像があったり、ご先祖様たちのすごく立派なところを見てきました。

小学校低学年の時から、おじいちゃんの家の会長室に遊びに行って「いいか。組織というのは上下関係で作っちゃいけないから、上司が部下をお互いに呼ぶ時に必ずさん付けで呼ぶことを社内ルールにしようと思っている」という話だったり、「経営トップに一番必要なのは頭の良さとかそういうことじゃなくて、優秀なマネージャーを包み込む器の大きさだ」といういろんな話を聞くことができました。

それはかっこいいとガキの頃から思っていたんです。

そうすると、官僚になった時、官僚の中にはすごくいい人もたくさんいて、「ここは尊敬できるな、うちの親族よりよっぽど優秀だな、頭いいな、勉強しているな」というのもあるし、「ちょっとこれはずれているな」と思えたのは、そのロールモデルがあったので、ズレを何となく感じるんですね。

なので、公務員になった後、ここはちょっとおかしいと思うテキストファイルを、自分のPCの中に常に置いておいて。ここだけは染まらないぞ、というのを常に書き起こしていました。

民間の友達と話す時に、それをネタにして「これは違和感あったんだけどどう思う?」という話をすると「それは絶対そうだよ」という。うまく染まるべきところと、染まっちゃいけないところを、自分の中で仕分けることによって、自分の中で自信が引き続きできるのをできるだけやるというのは、すごく頑張っていました。

橋本:なるほど。客観視できる機会を作るという。

栫井:そうですね。歯車になって思考が止まっちゃったら、気がついたら成長してない大人になっちゃうと思うので、そうしないようにする。

大久保:前回のセミナーの時、(川本人事院)総裁もおっしゃっていましたね。

橋本:そうですね、客観視。

 大久保:客観視、すごく大事だよとおっしゃっていましたよね。角さん、どうですか。

 :タコツボ化ということが何なのか、というところから入りたいですね。

今の僕なりの解釈ですけど、タコツボ化というのは物差しが1個しかない状態だと思うんですよね。組織の部門の成果指標なり、物差しですね。それが1個しかない。だから、その1個の考え方に囚われてしまっているという状態が、タコツボ化だと思うんですよ。

こうやって1回、言語化するじゃないですか。タコツボ化とは物差しが1個しかない状態。だったとすると、物差しを増やすしかないんですね。どうやったら増えるのかという話ですね。それは違う物差しを持っている人たちと接するしかないと僕は思います。

人間にとって人間はもう最高のインターフェースなんですね。人にとって最高のインターフェースが人間であって、それはAIには絶対代替できないんですよ。だとすると、どうやって違う部門の人たちと会うのか、という話になってきます。

物差しがたくさんある状態、それがあるから客観視できるわけでしょう。

なので、その出会いですね。自分が出会う機会が少ないのであれば、どうやって出会う機会を増やすのか。違う物差しと出会う機会をどうやって増やすのか。栫井さんがすごいのは、自分でそれを作ったからですね、そういう場所を。Facebookのグループを作ったとおっしゃっていました。それは別に栫井さんじゃなくても、官僚のグループは作れないかもしれないですよ。

自分と違う物差しを持っている人たちと出会う機会を自身で作って、その人たちと日常的に意見を戦わせたり、会話をしたりする場所はできるはずなんですよ。別にFacebookでもTwitterでも何でもいいじゃないですか。そういうのを駆使したらできますよね。

だから、自分と違う意見を持っている人たちが「なるほど。こういう考え方もあるのか」とオープンで相手をリスペクトする姿勢があって、その上に違う物差しの人たちと出会う場というのを作っていかれるといいのではないかなと思います。

大久保:ありがとうございます。橋本さん、その他気になるご質問は。

橋本:気になるのは異動の関係ですよね。お互いに国家公務員も地方公務員も、関心のない部署に異動させられることは実際にあります。

そういった時にどう仕事に対して関心を払うのか。そこで仮に歯車になってしまうと、どんどんさっきのタコツボスパイラルに入っていっちゃうと思うんですけど。そうではなくて、そこで興味のない仕事に対してもいかにモチベーションを保ち続けるのか。

もしくはそこで面白さを見出すのか。どういうことに注意されていましたか。

栫井:私の中ではワクワクが完全にキーワードなんで。一人暮らしをしている時に壁にでかくA4の紙を買って「ルール厳守 ワクワクすることしかしてはいけない」と書いていたんです。

どうしてもサラリーマンをやると、朝起きたら仕事かと暗くなるサザエさん症候群があると思うんですけど、それってつまらないじゃないですか。なので、朝起きてその貼り紙を見た瞬間、「やべぇ、今日、俺テンション下がってるかもしれない」と思ったらルールを守れていない。

何でテンションが下がっているのか、朝、起きた時に言語化して。これをぶち壊したら、ちょっと今日ワクワクするということを必ず考えてから行くという。

大久保:面白い。 

栫井:そうすると、5日中3日ぐらいワクワクする感じになって。

でも、100%にしたいから起業したんです。

いろんな部署があって、それぞれ求められることもやれることも違うんですけど、そのなかで自分がワクワクできることは何だろうということは、それぞれの中で柔軟に見ていくと、意外と見つかったりするんですよ。

そこをまずはできるだけトライして、「こうやったらワクワクするじゃん」というのがあればいいし、それでもどうやったって見つからなかったら、さっさと転職すればいい。とりあえずやってみるといいかなと思います。

橋本:なるほど。

大久保:角さん、どうですか。

:トークの中でもお話ししましたけど。腹落ちさせるということじゃないですかね。

公務員の中のミッションというのは、基本的に誰かのためになることしかない。その誰かのため、誰のためなのか、ということを必死で腹落ちさせるんですよね。そして、誰かこういう人たちと顔が見えた瞬間にスッと入ってくるんですよ。

そうすると、僕も正直言って、冒頭でもお話ししましたけど、民政局に異動が決まった時に泣きましたからね、泣いたんだけど、でも、腹落ちさせるんですよね。だから今、この部局はこういう状態にあって、課題があって、「それをこなせる人間は俺しかいないんだ。俺のバックアップは誰もいないんだ」って、思ってやっていましたよね。

橋本:心意気を感じますね。 

大久保:皆さんの心意気がありますよ。橋本さんは何か意識されていることはあるんですか。

橋本:私ですか。

橋本:栫井さんに近いかもしれないんですけど、とにかくワクワクポイントを探すんですよ。それも角さんもおっしゃるように、公務である以上、おそらく何かしらの価値は生んでいるはずなので。そこに自分が共感できないのであれば、共感できるように仕事を加工して意味付けを変えちゃえばいい。

そこはもう自分でできる範囲で変えちゃいます。それでもダメだったら、もう仕事そのものを変えるとかチャレンジしてみる。チャレンジすると叩かれたり、失敗したりもするんですけど、そんなのは別に100回バッターボックスに立って全部空振りでも、知るかと言ってやればいいんじゃないですかね。

大久保:立たなきゃね。

橋本:立たなきゃダメ。

大久保:そもそもね。選択肢も持たなきゃ選択肢じゃないんですよ。

橋本:そうそう。

大久保:そこにあっても、それを手の方に引っ張ってこないと、皆さんの選択肢にはならない。

橋本:ならないです。

大久保:それは今選んでいいということであれば、もっと広い視野で見ていただいた方がいいんじゃないかなと思います。そして……

橋本:多分、最後の質問になりそうです。

官民連携の話が1個あるので、これはぜひ実践されているお二人に伺いたいです。

質問「官民連携に、何が必要か」

橋本:これからも官民連携というのは重要になってきますし、必須だと思います。

今後、官民連携を推進していくにあたって、官の立場の人というのは、どういう立ち位置で民と臨んでいくのか。もしくは官と民が連携していく上で、官に期待される役割とか、期待されるものがあれば、ぜひ教えていただきたいです。

栫井:さっき角さんのお話にあった「相手のニーズに向き合って、ちゃんとやっていく」ということを、これからより振り切ってやっていくことかなと思っています。

これまで例えば中央官庁だと、業界団体と話すとか、有識者と話すという感じになっていたんです。「個別の企業と対話するのは癒着を生むからよくない」となっていた。

でも、実は一番ニーズを持っている人たちは、現場の人たちなので、変に癒着するということではなくて、お互いに率直に話せる官と民のそれぞれの友達をどんどん作っていって、こいつの言うことなら信頼できるというなかで、率直に話しながら新しい政策、新しい事業をどんどん生んでいく。

今だと一部の人たちの間だけでやっているのを、もっともっと10年後、20年後、(官民連携が)当たり前になっていくと、結果的に日本がすごくよくなるんじゃないかなと思います。

相手と向き合って、壁を超えてちゃんと動けるような人。そういうのがどちら側でも求められてきます。

橋本:既存のチャネルではなくて、いろんなチャネルを自分に持てるかどうかもポイントになりそうですね。 

栫井:そのとおりですね。

:官の側で意識しなくてはいけないのは「批判を恐れるな」ということかなと思います。

さっき栫井さんのお話の中にもありましたけど。1社と何かやるのをとても嫌がるんですよね。例えば、僕もある会社がある自治体と実証実験をやろうという話を持ちかけるのを、サポートしていたことがあります。

実証実験、あるサービスを優先的にその都市の市民の方々に使えるようにしてもらう。サービスを提供する感じだったんです。

そのサービスを提供していくという時に、窓口役は市になってもらう。市の中の人にとっては、得しかないような話だったんです。

そして僕が1回、仲介をした役所の職員の方は「それはいい話だ。やりましょう」という感じになった。でも、1週間後にもう1回ミーティングをした時に「上司がダメと言うんで」。

「何で?」と言ったら、「特定の会社とやる理由がない」と。だから便宜供与に当たる。でも、その時に彼らが言っていた理屈は、理屈に合わないと思ってるんです。なぜなら、市民がタダでサービスを受ける機会を役所の判断で放棄しているわけですよね。

それってどうなの。市民が得られたはずの利益が一部の人間がリスクを負わないことで放棄されてしまった。誰が損したかという話ですよ。これがいろんな所で実際に起こっていることなんですよ。もしかしたら、誰かから批判されるかもしれないと思って、動きが止まってるんですね。

公民連携というのは、公の部分が現場じゃないですか。課題の現場ですよね。そして、費用というのは何かというと、営利を求めて何かすると皆思いがちなんですけど、違うんですよ。

僕の中では、企業というのは課題を解決する装置なんですよね。この課題解決装置というものを課題の現場につなげるということ。これが公民連携なんですよ。

でも、そういうふうに公の側は思っていない。あの人たちは利益を求めているだけだと思っている。その考えをまず捨てるべきですよね。そして、もっとフラットに見るということです。

それができていない人がすごく多いし、これから公務員になっていくような人たちは、できないことを民がやってくれる。それに対してちゃんとリスペクトし、積極的に何が得られるのか計測できる、そういう価値基準を持つべきだなと思います。

大久保:角さん、ありがとうございます。まだまだ他にもたくさんご質問いただいているんですが、今日は2時間が本当にあっという間で。。。ごめんなさい。質疑応答の時間はここまでとさせていただいて。

申し訳ございません。最後にここまでご参加いただいた皆さんにお1人ずつメッセージを頂ければと思います。まずは角さんからお願いします。

:たくさんの方が今日ご参加いただいて、聴講いただいていましたね。

実際、チャットもすごくいっぱい読んでいたんですけど、なかなかこっちの話に夢中になって、コメントができなくて本当にすみませんでした。

いろんなコメントを読んでいて、最後にまとめて言うならば、皆さんがこれから人生でどんな選択をされるにせよ、それが皆さんの人生を作っていくものです。

人生というのは何かというと、決断の集合体なんですよ。その都度、その都度の決断の集合体であって。

それに意味をもたせることができるのは、皆さんが後を振り返って何を思うかですね。僕は今、振り返って大阪市の職員を20年やっていて、本当によかったなと思っています。

そしてそれが自分の人生を作ってきた。皆さんのこれからの人生がすごくいい形で彩られていくことを願いながらお別れの言葉とさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

大久保:続いて栫井さん、メッセージをお願いします。

栫井:皆さん、今日は長時間にわたってどうもありがとうございました。今日のキーワードのまず1つはワクワクですが、無理に笑えということではないですよ。

自分が何にワクワクするのか。「自分の感覚にちゃんと向き合ってあげて」ということです。無理に笑うんじゃなくて、そういったものを拾い集めて大事にしてくださいと。

私のもうひとつの人生哲学で「失敗は存在しない」という哲学があります。なぜかと言うと、行動して何かしくじったと思うことはいろいろあると思うんですけど、それって前進してるんですよね。どういう前進かというと、行動しないとわからなかった隠れたブラックボックスのような地雷のようなリスクがあって。

行動することによって、この環境でこう行動したらこう失敗することが見える化されたという前進。見えたら次はまた対策を打てるんですよ。なので、どんどん行動して、これは失敗じゃなくて全部、私は前進しているんだと思っちゃっていい。

どんどん行動して、どんどん成長してもらって。皆さん若い人は成長が速いですけど、私は次また皆さんとお話する時は、もっと俺の方が成長しているぜとライバルのような感じでいたいなと思っています。ぜひまたお話するのを楽しみにしています。

ありがとうございました。

大久保:以上で「WEB国家公務員セミナー 公務員という選択肢」を終了とさせていただきます。本当に貴重なお話、角さん、栫井さん、ありがとうございました。

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・記事協力:人事院
・ライティング:mizuki
・編集・デザイン:深山 周作