打ち上げ花火で終わらない続々と事業化していくチャレンジナガノ発プロジェクト|チャレンジナガノ2022 DEMODAY #7

長野県が主催(運営事務局:株式会社Publink)する、長野県内の市町村が抱える課題を、多様な企業とのオープンイノベーションによって解決する取り組み「おためし立地チャレンジナガノ(以下「チャレンジナガノ」)」。

60者の企業から応募があった2021年度(チャレンジナガノ2021 DEMODAY特集はこちら)から引き続き盛況な本取り組みは、2022年度も51者から応募があり、新たに多くの官民共創プロジェクトが誕生しました。

2023年3月7日に開催された『チャレンジナガノ2022 DEMODAY』の様子をレポートしていきます。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。
※記事内の肩書などは、イベント当時のものとなります。

第一期プロジェクト進捗の一部(3事例)をご紹介

株式会社Publink 代表取締役社長 栫井 氏(以下、Publink 栫井):ここからチャレンジナガノは一年前(2021年度)からスタートしており、そこで立ち上がったプロジェクトが「いまどうなっているのか」を一部ではありますが、紹介していきたいと思います。

紹介するのは、『白馬シャトル(白馬村)』、『辰野オンデマンドタクシー(辰野町)』、『SUWAプレミアム(諏訪市)』のプロジェクトとなります。

それでは、『白馬シャトル』のチームからお願いいたします。

【白馬村】目標から2.5倍の利用者数となったAIオンデマンドタクシー

白馬村役場 観光課 矢口 氏(以下、白馬村 矢口):よろしくお願いします。白馬村役場観光課の矢口と申します。

私の方からプロジェクト報告をさせていただき、その後に企業様の方からコメントをいただきたいと考えております。

白馬村の課題は沢山あるのですが、まず一つ目、このチャレンジナガノで提案したのは(地域の)基幹産業の中核を担う『観光産業の生産性向上』。

馬村 矢口:次に『公共交通』の課題を挙げさせていただきました。

白馬村 矢口:(これらの課題に対して)企業様にご提案いただいた内容が、『AIによるオンデマンド乗合タクシー』の提案をいただきました。

それを踏まえ、『白馬ナイトデマンドタクシー』を実証実験でスタートすることになりました。この事業の一番の目的は白馬を訪れたお客様の夕食時の二次交通になります。特にインバウンドの受け入れ規制が緩和された今年は、多くの外国人の観光客が戻ってくることを予測し、メインのターゲットを訪日外国人観光客として事業を実施しました。

白馬村 矢口:海外のお客様は長期滞在をしまして、ホテルで食事をとらない泊食分離というスタイルで滞在しますので、この事業は白馬村にとって必須の事業ということになります。

今まで夜の飲食店を巡るバスとして、定時定路線でマイクロバスを4台を走らせてました。しかし、乗車の時刻が定まっていて使いづらかったり、お客様が乗っていないにも関わらずバスが走っていたり、利便性や環境にも悪いスタイルでした。

これを今回AIオンデマンドタクシーにすることによって、ハイエース3台で、お客様のニーズに合った運行をすることが可能になりました。結果利用者も増え、お客様が必要なときだけ車が動くということで、CO2削減にも繋がりました。

白馬村 矢口:実際の取り組みにおいて、「どのような成果や気付きが得られているか」ということで、今まで走っていたナイトシャトルバスの利用者数は一番多いシーズンで1万3000人ほどありました。

今年の需要予測は3年ぶりのインバウンドの回復を考慮して、おおよそ5000人ほど、1日単位では71人ぐらいを目標にしていました。

白馬村 矢口:しかし、実際は1万2000人の実績で、1日あたりにすると167人と(目標数から)2.5倍近くの利用実績となり、お客様のニーズに沿った事業になってることは顕著であり、苦情や問い合わせというのが殆どなかったことから、SWAT Mobility様のシステムが誰にもわかりやすいシステムということがわかりました。

そして、この無駄のない配車は、間違いなく脱炭素社会に貢献してるということで、『気候非常事態宣言』を行った白馬村にとっては大変嬉しかった事業でございます。

白馬村 矢口:今後の展望ということ、まずは本年度の実証実験をしっかりと整理して、来年度を本格運行させること。それから観光交通としてスタートしてますけれども、住民の足であったり、スクールバスとしての活用なども関係セクションと調整を行っていきたいと考えてます。

白馬村 矢口:最後にチャレンジナガノに参加してみての感想になりますけれども、一番は今まで出会うことのなかった企業であったり、人材の繋がり、そうしたものが非常に財産となって現在に至っております。

それでは、(一緒に取り組みを行ったSWAT Mobility Japan)の末廣さんから、よろしくお願いいたします。

SWAT Mobility Japan株式会社 代表取締役 末廣 氏(SWAT Mobility 末廣):SWAT Mobilityの末廣と申します。

我々はオンデマンド交通の予約に用いるアプリケーションを提供させていただいてる会社でございます。チャレンジナガノに応募して、ここまでの実績を作ることができて本当によかったなと思ってます。

予想以上に人も乗ってくれて、、、1万2000人も乗ったという大きな実績ができて、インバウンド向けのこうした交通に関する取り組みって、全国初めてといって言いレベルだと思うんですね。

そういった事例が本当にチャレンジナガノを通じて、築き上げられたことを非常に感謝しております。

アルピコ交通株式会社 上嶋 氏(以下、アルピコ 上嶋) :アルピコ交通の上嶋よりコメントさせていただきます。昨年(2022年)3月に我々はDEMODAYに発表しましたが、一種のやりきった感があって3月後半ふわふわしてしまったなというところもあったんですけれども、4月から「予算どうする」、「運行どうする」、「調整どうする」、そんな打ち合わせを何度もさせていただきました。

数えてみたんですけれども、4月以降、オンライン、オフライン合わせて30回以上も打ち合わせをさせていただきました。

本当にお付き合い頂いた白馬村さん、SWATさん、BIPROGYさんの皆様に感謝申し上げたいなと思っております。

また、その打ち合わせを進める中で「何か面白いことやってるぞ」ということで信州大学のMaaSゼミと連携して授業をすることになったり、フィールドワークをやらせていただきました。SWATさんがシンガポールのスタートアップなので、シンガポールの在日大使に白馬までお越しいただいて、実証実験に参加いただくなど、仲間やサポートしてくれる皆様に本当に支えられた取り組みで、やってよかったなと思っております。

実績に関しては皆さんお話の通り、AIオンデマンドをインバウンドのお客様に提供する事例は、おそらく国内初になるんじゃないかなと思っておりますので、この取り組みを来期また今後に向けての皆様と調整して進めていきますので、今後ともご期待いただければと思います。

Publink 栫井:ありがとうございます。多数のメディアにも取り上げられており、本当に我々も嬉しいです。

では、次に辰野町デマンド型乗合タクシーのプロジェクトチームの皆様お願いいたします。

【辰野町】運賃収入44%アップした定額乗り合いタクシーの刷新

辰野町役場 まちづくり政策課 桑澤 氏(以下、辰野町 桑澤):辰野町まちづくり政策課の桑澤と申します。よろしくお願いします。

まず、はじめに定額乗り合いタクシーの取り組みについて、発表させていただきます。

スライド(下記画像)に地方における交通課題で代表的なものを挙げさせていただいておりますが、特に辰野町では、平成25年から導入していたデマンド型乗り合いタクシーに沢山の課題を抱えておりました。

辰野町 桑澤:ダイヤが固定であったり、乗り降り場所が指定であったり、前日までの予約に限られているなどの要因がありまして、「帰りの利用がとにかく少なかった」というのが課題になっております。

片道だけの利用で留まっていたため、全体的に見直したいと考えていたところ、利用者の声を説明会などで吸い上げて、まずは既存利用者の方々の利用が増えるようなデマンド型乗り合いタクシーの仕組みを模索していたところでございます。

バイタルリード株式会社 代表取締役 森山 氏(以下、バイタルリード 森山):我々は定額乗り放題の乗り合いタクシーというのを提案いたしました。辰野町さんでは、1乗車当たり1,000円、1ヶ月乗り放題は3,000円という形で運行を行っております。

平日の月曜日から金曜日に運行中ですが、そこの配車の仕組みをわが社のTAKUZOという過疎地域型オンデマンド配車サービスを導入させていただきました。

バイタルリード 森山:具体的には、よくあるような『早く運ぶ』のではなく、出来るだけ少ない車両で、なるべく時間をずらしていただいて、『束ねる』ことで1乗車当たりの乗車人数を増やして。事業性を高めるというような仕組みになります。

バイタルリード 森山:利用者さんは、前日の予約から当日の1時間前、これはわざと1時間前にすることによってアイドリングを高めるようにしてるんですけども、元々過去9年間は1乗車300円のところから値上げをして、1乗車1,000円もしくは3,000円乗り放題という形にいたしました。

バイタルリード 森山:チャレンジナガノでは、非常に寒いときに現地訪問させていただいて、事業イメージを説明をしたところ、結構早い段階で使ってみようという話になって、3回に分けて業務を行いました。

バイタルリード 森山:値上げしたにもかかわらず、非常に受け入れていただいて利用者も増えているんですけども、2022年5月の連休明けにきちんと出前講座という形で全部の公民館で丁寧なコミュニケーションをしたのが功を奏したのではと考えています。

それでは、桑澤さま、続きをお願いいたします。

辰野町 桑澤:定額の乗り合いタクシーを導入した後の成果は、新たなシステムを導入したことによって、Door to Door、フリーダイヤ、当日予約にも対応できるようになったことで利便性が向上しておりまして、運賃収入も導入前に比べると1ヶ月平均約44%も増加をしているような状態でございます。

そして利用人数は、1ヶ月平均498.5人となっておりまして、いままでのデマンドタクシーよりも約200人ほど増加し、住民の利用者の方々にアンケートをしたところ、外出回数もひと月当たり4.3日ほど増加したという効果が見えております。

今後の課題は、利用者が今後増えていった場合に利用者と交通事業者にインセンティブを与えていけるようなビジネスモデルの構築、運賃収入の増収により行政負担の軽減を図っていけたらなと思っております。

辰野町 桑澤:今後の展望。感想については、利便性の向上を図り、利用者を増やすことで交通事業者や行政の負担を軽減できるような運行形態を目指します。

そのためには、利用者に当町の身の丈に合った『そこそこ便利』と表現しておりますけども、そこそこ便利な運行形態への理解を深めていき、共創による公共交通を目指します。

感想ですけれども、自治体によって、多様な地域課題を抱えており、解決に向けて適した民間事業者の選定は困難であると思います。しかし、チャレンジナガノに参画したことにより、民間事業者様の考え方やノウハウをより丁寧に知ることができ、政策の実現に近づくことができたと思っております。

Publink 栫井:ありがとうございました。素晴らしい成果だと思います。では最後にSUWAプレミアムのチームの方々、よろしくお願いいたします

【諏訪市】地域ブランド力の広報・販売力をボトムアップ

諏訪市役所 産業連携推進室 茅野 氏(以下、諏訪市 茅野):諏訪市役所産業連携推進室の茅野といいます。

SUWAプレミアムの事業について紹介をさせていただきます。流れなんですけども、冒頭私の方から概要説明を行い、今回二つの事業者様と事業を進めましたので各事業者様からお話を頂いて、最後に私の方から感想や次年度以降の展望についてお話していきたいと思っています。

諏訪市は、長野県の中央に位置する高原湖畔都市でございます。

諏訪市 茅野:諏訪市は、『東洋のスイス』と呼ばれる精密機械工業、観光業が併存する地域の特性を生かした地域ブランド、これを『SUWAプレミアム』と呼び、ブランドを展開しております。

諏訪市 茅野:こちらは平成26年度から始まったブランドなんですが、長く続けることによって課題も出てきてまいりました。大まかに言いますと二つ。

参加希望者が増えてきたので、マネジメントすることが私どもだと難しくなってきた。また、商品のデザイン面でのブラッシュアップ。基本的に新しいブランドになるため、新しい物を生み出す上でデザイン面でのブラッシュアップができれば良いのですが、私達はデザイナーではないので難しいという課題がありました。

諏訪市 茅野:これらの課題を挙げさせていただいたところ、こちらのチャレンジナガノで、12社という非常に多数の事業者さんに興味を持っていただいて、アプローチをいただいたところでございます。大変ありがとうございました。

12社の皆様から非常に興味深い提案を頂きましたが、全社と取り組むのは流石に難しいということでポイントを絞って、こちらからポイントを3つ挙げて、『費用感』、『マッチング・ブラッシュアップ支援が可能か』、『地域関係者と一緒に参画して、将来的に諏訪市と繋がる可能性があるか』ということで絞って、再ヒアリングを致しました。

諏訪市 茅野:再ヒアリングの結果、当初抱えていた課題が、私どもの中でもさらにクリアになっていったこともプロジェクトを進める上で非常にメリットであったと感じております。

まず、私ども行政職員ですのでマーケティングの予算人員が足りない。さらに売っていくための販路が足りない。認定品を増やしたいけれども手段が限定的。さらにネット上のニッチなファンへのPRが足りない…というように、いずれも私どもだけではなくて、地域の関係者独力では対応困難な課題と認識しております。

諏訪市 茅野:そこで課題に対応するためにNAVICUS様、それからアンテナ様より提案をいただきまして、NAVICUS様からは、(下記画像の)①から③までの施策、それからアンテナ様については④の施策を提案を頂きまして「これならいけるかな」と感じ、令和4年度事業を進めることができました。

諏訪市 茅野:令和4年度なんですけど、このチャレンジナガノの事業化第1号ということで長野県様のプレスリリースでも紹介いただきました。長野県より室賀課長様にお越しをいただきまして、関係者の皆様方と記者会見をすることができました。

諏訪市 茅野:令和4年度は、2事業者様は精力的に活動をいただきまして、アンテナ様には個別事業者様に訪問をいただいて、きめ細やかなヒアリングだったり、オンラインをも併用した活動をいただいております。

NAVICUS様につきましては、いきなり施策をやるのではなく、事前に調査を頂いて、現状から洗い出して、細かく丁寧に対応いただいております。

直近では、アンテナ様からは個別の事業者様にとてもわかりやすい資料を御提供いただいて双方が納得した上でのホームページ改善に取り組んでいただいております。

また、NAVICUS様は、3月11日にイベントも行う予定でございますので、ぜひ皆さんお越しいただければなと思っているのですが、このような素敵なイベントの企画をしていただいて、ネットだけではなくてリアルな展開もできるような予定も組んでおります。

諏訪市 茅野:一旦、私の説明以上になりまして、アンテナ様、NAVICUS様にお話をして頂きたいと思います。

アンテナ株式会社 織 氏(以下、アンテナ 織):アンテナ株式会社の織と申します。よろしくお願いいたします。

今回、諏訪様との取り組みでは、諏訪市内の地元製造業のICT発信力の底上げのため、弊社サービスのクラウドWEBマスターにて、5社の諏訪市内の製造業者様へサービスを提供させていただきました。

アンテナ 織:主な取り組み内容としては、ホームページの改修やSNSの活用、ホームページと店舗の連動など様々な取り組みをして参りました。例えば、ある事業者ではホームページの改善後、前年と比較するとページビュー数は32%増、ページ別訪問数は27%増という結果が出ております。

今回、ホームページ、SNSの重要性は各地元事業者も肌で感じつつも、何から手をつけていいかわからず、そのままになっており、(そうした事業者に)実際の一歩を踏み出させる支援の重要性を感じております。

アンテナ 織:今期の弊社の取り組みの力点は、この第一歩を踏み出すところに置いておりました。

来期以降も一歩を踏み出した地元事業者には第2歩目となるさらなる支援。まだ一歩を踏み出せていない地元事業者への支援を継続的に行い、諏訪市内の情報発信力の底上げをし、国内外の認知獲得を強力に推進してまいりたいと思っております。

株式会社NAVICUS 望月 氏(以下、NAVICUS 望月):では、続いて株式会社NAVICUSの望月から、今年度の取り組みについてご紹介させていただければと思います。

SUWAプレミアム事業についてお話させていただきます。取り組んだ内容については先ほど茅野さんからお話あった通りなんですけれども、我々が主にやらせていただいたところはまず最初の土台作りになります。

最初の課題として、色々な場所で商品の分析管理が(バラバラに)されていたので、「どこで、何が、どのぐらい売れているのか」の把握からまず始めさせていただきました。我々が頭となり、手となり、足となり、売り上げ自体をしっかり現状を把握していきました。

NAVICUS 望月:戦略の方も立て、「ブランドを一緒に育てていこう」ということから始めさせていただきました。

もう一つ我々の目指したところとしては、皆さん事業者様、域内で自治体様と一緒にやられてるところでは、同じ課題あるんではないかなと思うんですけれども、「実際そのプレミアムなものが本当にプレミアムなのか?」とか「目指してるものに対して本当にそれできてますか?」というような問いを立てていくことは、中々自分たちの中だけやりきれないところがあるんじゃないのかなって思うんですけれども、そういったところに対して、実際に我々がユーザー体験を自分たちで代わりにしてみて、物自体とか荷姿とか手元に届くまでの体験全てに対して「本当にこれ大丈夫ですか?」、「これこういうふうに改善しないと価値が届かないんじゃないですか?」といったサポートをさせていただきました。

結果的なところで言いますと、購買の意思決定プロセスのULSSASモデルに則って、1年目、2年目で戦略を立てまして、収益に関してもSUWAプレミアムはいま現在過去最高益を狙える位置にあり、ふるさと納税のポータルサイトでもランキングに掲載されるような成果を得ております。

諏訪市 茅野:最後に感想と展望ですが、今回本当にチャレンジナガノを活用させて頂いて私も一緒に楽しんで事業を進めることができたのは、非常に大きな成果ですし、二つの事業者様からあったように確実に成果に結びついております。

今日、当市の予算審査委員会だったんですけども、そこで来年度も予算を組むことができまして、二社様との関係性が続くものですから、来年度もさらに深堀して横展開、縦展開できるものと期待しております。


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