地域企業の人材不足解消に挑む、小諸市の『デジタル施策』と『外国人材獲得』の試み|チャレンジナガノ2022 DEMODAY #3

長野県が主催(運営事務局:株式会社Publink)する、長野県内の市町村が抱える課題を、多様な企業とのオープンイノベーションによって解決する取り組み「おためし立地チャレンジナガノ(以下「チャレンジナガノ」)」。

60者の企業から応募があった2021年度(チャレンジナガノ2021 DEMODAY特集はこちら)から引き続き盛況な本取り組みは、2022年度も51者から応募があり、新たに多くの官民共創プロジェクトが誕生しました。

2023年3月7日に開催された『チャレンジナガノ2022 DEMODAY』の様子をレポートしていきます。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。
※記事内の肩書などは、イベント当時のものとなります。

『小諸市内企業の人材不足』を根本から解決したい

小諸市役所 商工観光課 高野 氏(以下、小諸市役所 高野):小諸市役所 商工観光課の高野と申します、よろしくお願いいたします。

小諸市の地域課題として、一つ挙げたのは『市内企業の人材不足』ということです。

小諸市役所 高野:「この課題に対して何かできないか?」ということで、チャレンジナガノに応募させていただきまして、各企業さんのソリューションと連携して、この課題を打破していきたいというのが、きっかけになっております。

小諸市は、長野県の東側にあり、近くに軽井沢町さんがあります。首都圏から非常にアクセスが良い場所になっています。

小諸市役所 高野:写真の通り(上記画像)ですね、小諸市内古民家が点在し、標高が高いことから『高原の城下町』なんていう風に呼んでおります。

先ほどの地域課題について詳しくご説明すると、小諸市の人口が4万人ちょっと。それほど多くはない現状でありながら、企業さんは数多くあり、特にコロナ禍における製造業さんは、お仕事が忙しいということがあって、人材不足が深刻化しました。

小諸市役所 高野:一方、長野県全体に言えることとして、移住者が非常に増えており、小諸市も昨年は社会人口増(注:転入・転出による人口の増減)で167人プラスになったという現状にあります。

この外から来る(移住者の)働きたいという需要を捉えて、数年前から小諸市独自でオンラインによる合同企業説明会を開催しておりました。

小諸市役所 高野:毎回採用者は何人か出るものの、企業さんが求める求職者数はもっと計り知れませんので、根本的な解決に至らないという課題がありました。

この合同企業説明会の課題としては、「求職者いわゆる応募者を増やしたい」という課題としておりました。

この課題に対して、チャレンジナガノさんに提案してですね、複数社を挙げていただいた中で、アンテナ株式会社様と株式会社One Terrace様に決定をいたしました。

小諸市役所 高野:決定した理由としては、アンテナ株式会社様はSEO対策に凄く長けた企業でして、説明会自体のSEO対策、また説明会に参加する企業側のSEO対策に期待できると思いました。

株式会社One Terrace様は、外国人材の採用にかなり長けた企業ということで、国内で人材を確保する面に加えて、海外の方から人材を確保する面、この両面で小諸市の地域課題の解決に至るのかな思い、株式会社One Terrace様が最適なパートナーだと判断いたしました。

小諸市役所 高野:今年度は、『来年度本格的に稼働していく』ために、まずお互いの関係性作りとして打ち合わせを何度も設定して、特に市内企業の人材確保支援となりますので、企業訪問を行ったり、各市内企業さんの課題を正確に吸い上げるためにアンケートを実施したり、そのアンケートに基づいてセミナーを開催いたしました。

小諸市役所 高野:来年度は、(上記画像にて)『Plat form』と書いてある小諸市独自の人材マッチングサイトを構築しようと思っております。このPlat formに市内企業の就職情報を載せるのですが、ただ載せるだけではなくて、攻めの姿勢としてPlat formの中で多様な人材を確保していくための企画を講じていこうと話を進めております。

株式会社Publink 代表取締役社長 栫井 氏(以下、Publink 栫井):ありがとうございます。では、次にアンテナさん、よろしくお願いいたします。

地域企業の魅力を束ねて”面”で採用力を高める『アンテナ』のオンライン施策

アンテナ株式会社 代表取締役 吉井 氏(以下、アンテナ 吉井):アンテナの吉井と申します、よろしくお願いいたします。

弊社は、Web制作会社で、特徴的なのがメガバンクや自動車メーカーなどの多くのWeb戦略を立ててきております。

アンテナ 吉井:それともう一つ柱として、ウェブマスター、いわゆるホームページの管理者を弊社請け負うことがあり、スカイツリーさんであったり、多くの企業で取り組みを行っています。

その中でコロナ禍より少し前から進めていたんですが、大規模案件でしか築けないノウハウが弊社に貯まっているため、それをダウンサイジングして地域に還元できないかと思い、第1弾として(神奈川県の)三浦市、第2弾として(長野県内の)飯山市に事業所を出しております。

アンテナ 吉井:商品も地元に合うように月額2万9800円で、サブスクリプションモデルのような形で提供しており、これをもとに昨年度のチャレンジナガノで諏訪市さんと事業化第1号ということで採用頂いております。

アンテナ 吉井:諏訪市さんの方では、地元の事業者さん、特に製造業が多いんですけども、皆さんいいもの持ってるのに発信がうまくできてないため、各事業者さんの(Web施策を)支援する取り組みをいたしました。

アンテナ 吉井:弊社で目指しているのは『地域のウェブマスター』になりたいと思っておりまして、企業一社で頑張っても中々面を取ることができません。

なので、地元の事業者さんと一緒に面を取るような活動をしたい。結果として、地域のITリテラシーを高めたい。

そんなことができればと思っております。

アンテナ 吉井:小諸市様では、地元企業の採用課題に対して二つの取り組みを計画してます。

一つは、小諸市のホームページに地元企業が人材採用するプラットフォームを作ること。もう一つが、市内事業者のハンズオン支援の2点になっております。

アンテナ 吉井:その手始めとして、令和4年度としては昨年まで行っていた合同説明会をバージョンアップして、弊社の知見と地元の株式会社アイクさんと協働で、より良いものに改善するための動きをしております。

また、市内事業者を8社訪問して、採用プラットフォームの説明とともに、情報発信の課題や解決策、取り組み方など、情報交換を行いました。

アンテナ 吉井:そしてプラットフォームの構築の調査やコンセプトなど、来期に向けての準備を進めております。

来期、この2023年4月から本格的に採用プラットフォームを構築していきたいと思っておりまして、待ち型の求人情報リストじゃなく、攻めの企業の個性や特徴がいっぱい集まるような魅せるサイト構築を目指しております。

アンテナ 吉井:その核として行いたいのが、私どもの得意としているSEOの取り組み。もう一点、個別の企業サイトやSNSを通じた情報発信のハンズオン支援をしていきたいと思っております。

求職者の方々は真剣であればあるほど、求人先の企業情報を見に行くと思うんですね。

そういったときに企業情報がしっかり載ってないと非常にマイナス要因になってしまうんじゃないかと思ってます。

そこをセミナーとクラウドWebマスターという商品で、個別フォローしていこうと思ってます。

アンテナ 吉井:小諸市の強みはなんといっても、ご担当の高野さんの強力な推進力というところ、あと地域として社会増するなど、非常に基盤として良いものをお持ちなのかなと思ってます。

各企業訪問で見えたのが、地域貢献の意識が皆さん強いんですね。そういったものは素晴らしいものだと思ってまして、チャレンジナガノで今回お話した取り組みをしっかりと築いていければと思ってます。

Publink 栫井:ありがとうございます。では、続きましてOne Terraceさん、お願いいたします。

外国人材にとって”働きやすいだけ”ではない、”住みやすさ”まで考えた『One Terrace』の地域連携スキーム

株式会社One Terrace 多文化共生事業部 松本 氏(以下、One Terrace 松本):皆さん、こんにちは。株式会社One Terraceの松本と申します。

本日は小諸市様に採択いただきました『自治体×地域企業×人材系企業のサステナブルな連携スキーム』をご紹介をさせていただきます。

One Terrace 松本:弊社は、『寄り添う力とテクノロジーで外国人材の観点から、企業・教育機関・自治体の課題を一緒に解決する会社』として、外国籍エンジニア紹介の『チョクトリ』を主力事業としております。

One Terrace 松本:こちらはベトナム、韓国、ミャンマーの現地で、例えば機械設計だったり、建築だったり、理系の大学を卒業された外国籍の方を現地から直接、主に日本の地方の中小製造業の企業様や建設業の企業様にご紹介をしております。

そういったご紹介をする中で色んな地方で交通人口減少だったり、人手不足が叫ばれてますが、『外国人材を採用するだけで人材不足の課題は解決されるのか?』という疑問を私たちは持ちました。

One Terrace 松本:結局、最終的には「企業に長く勤めて欲しい」、また「地方により長く定着してほしい」という地元の皆様の期待がございます。なので、ご紹介するだけではなく、次のステップとして『働きやすい企業』、また『住みやすい街』と思ってもらえるような仕組み作りを、弊社と自治体様と企業様で一緒にやっていきたいなという想いがあり、今回このような提案をさせていただきました。

One Terrace 松本:『自治体×地域企業×人材系企業のサステナブルな連携スキーム』として、まず左側から外国人材雇用に関する啓蒙イベントを自治体様と実施します。

そこから地域企業と弊社が繋がった場合、チョクトリを通じて外国人材のご紹介をいたします。

紹介した場合、紹介手数料を企業様から弊社がいただくんですが、その一部を企業版ふるさと納税などを通して納付を自治体様にします。その納付したお金をワンストップ型の外国人相談窓口の予算に充てていただけないかという提案になります。

こうすることによって、企業と外国人の方々だけの関係ではなく、自治体と外国人住民の方々の関係をより良くすることで、より地元に定着できるんじゃないかと私たちは考えております。

One Terrace 松本:今年度取り組んだ最初の啓蒙イベントでは、セミナーに向けて、地元企業18社に対して外国人採用について意識調査を実施しました。

One Terrace 松本:外国人材について苦労したところは、主に外国籍人材の採用に関する知識不足や、入社後に関してはやはり語学の壁といったコミュニケーションの部分に苦労された企業様が非常に多かったです。

One Terrace 松本:なので、今回セミナーでは、『外国人材雇用の入り口の知識をつけてもらう』こと、また『入社後の育成、コミュニケーションのための工夫点を知っていただこう』という趣旨でセミナーを開催しました。

One Terrace 松本:2月24日、小諸市役所で行いまして11社12名の方が参加していただきました。新しい外国人採用に対する課題が生まれたというようなお声をいただき、弊社としても非常にやりがいのあるセミナーでした。

今後は、外国人材の受け入れ体制作りのご支援を弊社がさせていただきます。

例えば、先ほど発表ありましたアンテナ様とコラボして外国人採用に関する情報発信コンテンツの充実、チョクトリを通じた人材紹介、また日本語レッスン、行政と外国人住民の方々のコミュニケーションのしやすいような環境、リソースをご提供して、たくさんの方々がより地元に定着していただける仕組み作りをこれから行っていきたいと思っております。

チャレンジナガノを通して感じた小諸市様の強みとしては、地元企業様と小諸市役所様の心の距離がすごく近くて、皆さん一丸となって課題解決をしようという意志がとても伝わってきました。

人手不足という課題意識をしっかり持っていて、解決のためのアンテナをしっかりと張っていらっしゃる企業様が多かったです。

また、Publink様、長野県様も、すごく前のめりにサポートいただきまして、一緒に一つのものを作り上げている感じがとても安心感があり、とても濃い時間だったと思っています。

なのでこの関係は引き続き続けていきたいと思いますし、小諸市様だけではなくて、他の長野県内の自治体様ともやっていけたらと思っていますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

Publink 栫井:One Terraceさん、ありがとうございます。では、2社と取り組みを行ってみて、小諸市 高野様、いかがでしたでしょうか?

別テーマでも一緒に出来る関係を築き上げる

小諸市役所 高野:とてもいい関係性で進めてこれたと思っています。スムーズでしたし、本当にトントン話が進めていけたように感じています。

この感じ方は、多分企業さんとは、ちょっと違いもあるかもしれませんけれども、行政としてはそんな印象でございます。

「何をやる」というのもすごく大事なんですけど、「誰とやっていくか」というのが、もっと大事なのかなと思っていて、今回は『人材不足』をテーマにやってますけれども、今後も何か別のテーマの事業の関係性も作れるのかなって思っています。

ハンズオン支援の方では、かゆいところに手が届くじゃないですけれども、企業さんと行政の目線合わせをいつもしていただいて、非常に何度も助けられた印象でございます。

今後も、本当はずっとハンズオン支援いただきたいような気もするんですけれども、企業さんと一緒に繋がりを作っていただきました。来年度からは(ハンズオン支援なく)企業さんと一緒にやっていくのですが、非常にやりやすく、一番は背中を押していただいて時間を無駄にしなかったなと思いました。

そんなところが、感想でございます。

Publink 栫井:ありがとうございました。関係する当事者全員が、前のめりなチームだった小諸市さんでした。

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