霞が関で実際に行われた改革、その知見をシェアし表彰することで更なる改革を促進する目的で開催されたピッチイベント『第1回・意外と変われる霞が関大賞』。
改革派現役官僚有志団体「プロジェクトK」が主催し、審査員として河野太郎氏、WLB代表の小室淑恵氏、千正組代表で千正康裕氏(元厚労官僚)、オブザーバーとして人事院総裁の川本裕子氏などが参加。
その様子を詳細にお届けします。
継続的で効果的な組織改革を生み出す『仕組みと仕掛け』
プロジェクトK 4期副代表 栫井 誠一郎(以下、栫井氏):それでは、文科省の方々になります。よろしくお願い致します。
文部科学省 松本 向貴(以下、松本氏):それでは「意外と変われ『て』る!ボトムアップで切り拓く文部科学省改革」というタイトルでお話しさせていただきます。
私は松本と申しまして、民間企業から転職して霞が関には10年目になります。今日は霞が関は皆がネットで言ってるほど地獄じゃないという面もあるし、もっと変われるし、変えていかなくちゃいけないという想いで参加させていただきました。
文部科学省 福永 悠貴(以下、福永氏):同じく福永と申します。私は最近、親になって、「まだ役人をやってるの?」、「なんでやめてないの?」と言われることが非常に増えました。
率直に悲しいですし、こんな想いはもうしたくない、未来のパパママにもさせたくないと思って、本件を推進しております。
今回、文科省の取組におけるコンセプトを2つ紹介しますけれども、一つ目が「有志✕担当課」。
福永氏:一つ目のケースです。ご存知の方もいるかもしれませんが、文科省では2022年1月からSlack、クラウドストレージサービスであるBoxを導入しました。こういったシステム導入は、システム担当部局だけが頑張ってもうまくいきません。
福永氏:そこで、職員有志とシステム担当部局が一緒に、次期システムについて相談し、導入後も、職員有志がSlack・Boxの伝道師として、導入したシステムの利便性を引き出しています。
SlackやBoxの活用にはメリットも色々とあるんですけれども、日常業務でどういうふうに使えばいいのか分からない、想像できないかもしれないところを、職員有志がSlack・Box伝道師として日常業務の中で活用実例を示して、他の方がそれを真似して、広く職員がメリットを実感できるようにしています。
詳細は割愛しますけれども、国会の法案審議で1日63問も当たることがありました。本来だと「63問もあるから、今日は徹夜だなぁ」と思うところ、日付をまたがず全問対応終了できています。
福永氏:これまでは問取り(※)から答弁作成まで、質問ごとに個人が全てのプロセスを一気通貫で担当していたところを、プロセス毎に分業制にしました。SalckやBoxの活用によって、修正意見のリアルタイム共有ですとか、答弁の作成決裁を同時並行でやったりと、メリットが多く、分業制を効果的なものとすることができています。
※門取り…国会で、各省庁の担当者が質問をする議員にあらかじめ内容を聞いておき、それに対する答弁書を作成すること。質問取りともいう。
二つ目のケースです。文部科学省では、「提案型政策形成」というものをやっております(※)。これはいわゆる政策コンペティションなんですけれども、文部科学省の推しポイントは「誰でも参加できる」というところです。
※2022年11月現在は、若手を中心とした有志職員等の政策提案の実現に向けた取組である「Policy Making for Driving MEXT(ポリメク)」に発展している。
福永氏:実際に1年目の職員も参加しています。提案した政策については、全職員が投票したり、幹部が審査したり、良いものは概算要求に反映されることもあります。
ポイントとしては、(先に述べた)誰でも参加できること、熱意がある方に対して人事併任(※)発令もできることです。人事併任発令により、その時点で担当課の職員でなくても、「実際に当事者になれる」というところがポイントです。
※併任…任命権者の異なる他の機関の職員を、その身分を保有させたまま、その任命権者の同意を得て職員に任命することをいう。
有志✕担当課の連携効果ということですけれども、担当部署だけに任せると、通常業務もある中で後回しになってしまうかもしれないことでも、有志が一緒に行うことで、「本当にいいものを作りたい」という熱意を持って政策を良くすることができます。
ただし、なんでもかんでも有志がやればいいというものではありません。
福永氏:言いっぱなし、やりっぱなしになった有志提言を、これまでたくさん見てきました。そうしないために、提言した取組に実行力を持たせるために、有志と担当部署を組み合わせて、正当性・継続性を与えて強みを生かし弱みを補うというのが文部科学省の取組のポイントです。
松本氏:今、省の中でのコラボレーションの取組をいくつかご紹介しましたが、省の外とのコラボレーションの取組も盛り沢山なので、紹介していきます。
福永氏:ケースの三つ目、四つ目、どちらも職員研修のスキームですが、左側は、昨年度、公立学校・民間企業と共同して学校のネット選挙導入に向けた取組を職員が一緒に作っていく、といったことをやりました。また、学習支援NPOに半年間職員を派遣しました。こういった形で外から学ぶということを文部科学省では積極的に取り組んでいます。
今回のピッチに合わせて、ケース1から4までまとめている中で我々が感じたのは、有志と担当課の取組は、積み重ねた先進事例があって今ここまできているということ。
松本氏:職場を面白くしていくのは、仕組みや取組だけではなく、人の力・発想なんだと思っています。答弁の分業や政策提案が機能したのは、職員にスキルや相互の信頼関係があったからですし、「どんな研修をするか」ということが、研修の仕組みの有無以上に大事。人と仕組みのそれぞれの良さを両輪として発揮して、「もっと仕組みを理解して活用・想像できる職員になる」、それから「もっと現場を知って、スキルと熱量両方持った職員になっていきたい」という意気込みを申し上げて今回のピッチを終わらせていただきます。
福永氏:ご清聴どうもありがとうございました。
栫井氏:質疑応答に入りたいと思います。挙手をしていただいて、、、では、千正さんお願いします。
株式会社千正組代表取締役/元厚生労働省官僚 千正 康裕(以下、千正氏):ありがとうございます。職員の人ひとりひとりの問題意識とか、熱意・やる気という課題に組織がいかに取り組んでいるか、取り込んでいくというのは、すごくいいサイクルだなと思いました。
千正氏:少し解像度を上げるための質問で、提案型の政策形成には、私も現役(官僚)の時に色々関わりましたが、それを組織の言いっぱなしで終わらないようにすることが重要だと思います。
(文科省で)そのための仕組みとか仕掛けっていうのが、あれば教えて下さい。
松本氏:ご質問いただいてありがとうございます。
その点は、まだまだ改善すべきところがいっぱいあるとは思うんですが、例えば1年目の職員であっても、いきなり担当局長までプレゼンテーションをする。
それによって、省内で「これいいね」ってなったというだけでなく、直接上位の意思決定者に提案できる仕組み等があり、予算や事業に反映され易いと理解しています。
福永氏:また、まだ複数の事例があるわけではないんですけれども、人事上の併任発令もできることのインパクトは相当大きいと聞いています。
栫井氏: はい、次に小室さんお願いします。
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長 小室 淑恵(以下、小室氏):クラウドツール等を導入しようとすると様々な抵抗にあう。これは他の省庁もみんな苦しんでるんですけど、どうやって乗り越えたのかというところを伺いたいです。
それと、今後このパワーを(文科省の管轄でもある)学校の働き方改革にも活かして頂きたいと思います。
文部科学省 水島(以下、水島氏):ご質問ありがとうございます、水島と申します。
クラウドツールの導入は、セキュリティの問題、使い勝手の問題等、色々あると思います。
水島氏:ただ、お答えになるかわからないですけど、(文部科学省では)システム担当部局も前向きにSlackの導入等に取り組んでいまして、セキュリティについても人一倍前向きにコミットし、「どうやったら便利になるか」を考えて、試行錯誤しながらSlack上で、職員がお互いに提案したり補足しあったりする関係が作れているかなと思います。
まさに学校でもなかなか紙が多かったりとかセキュリティとか、ネットワークがちょっと遅いとかいろんな課題があるんですけれども、(こうした自身の働き方改革を通じて)我々も実感しながら、解像度高く学校の働き方改革等に向けたアドバイスをできるようにしていけるように、これからも頑張って参りたいと思います。
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・記事協力:プロジェクトK
・編集・デザイン・ライティング:深山 周作