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マイナビ✕人事院で「ファーストキャリアとしての公務員」にフォーカスし、元官僚、元自治体職員で起業家であるPublink代表 栫井氏とFilament代表 角氏をゲストに(ファシリテーター:人事院 橋本氏)公務員の可能性と限界を語り尽くした。
その様子をレポートする。
※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、主催者の了承のもと、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。
公務員というキャリアの”可能性”と”限界”
マイナビTV MC 大久保氏(以下、大久保):『公務員という選択肢』というところなのですが、公務員をされてきたことによる可能性、さらに限界はどういうところに感じられたのか。
そして、お二方ともファーストキャリアは公務員でした。
なので「ファーストキャリアとして公務員を選ぶとはどういうことなのか」を、これから就活を始められる学生の皆さんにお話をさせていただきます。
人事院 橋本氏(以下、橋本氏):まず最初は『可能性と限界』、お2人だからこそ聞けるんだと思うんですよね。公務員の経験があって、そこで得られた楽しさやもしくは成長というものがあったと思いますし。
一方で、起業もされているということは、そこには公務の限界があったんじゃないかなと。そこにまず迫っていきたいなと思います。
まず栫井さん、6年間に7回も仕事が変わって、面白かったですか。あと、どんなことをご自分の中で得られてきましたか。
株式会社Publink代表 栫井氏(以下、栫井):まず、いま私がやっているPublinkという仕事をすることで「死ぬ瞬間に感謝されるような生き方ができるんじゃないか」というのも公務員をするなかで気がついたというのは本当に大きいです。
その前に、現役の官僚、人事課は基本的に良いことしか言わないと思うんです。でも、私と角さんは良いこと、悪いことを忌憚なく何でも言っちゃうので、一番生の情報を得られると思います。
橋本:期待しています。
栫井:(話を公務員の可能性に戻して、)公務員はやれることがすごく大きくて、公務員じゃないとできないことってたくさんあるんです。
でも、組織として未成熟、発展途上なところがあって、例えば議会や中央官庁で言うと官邸がすごく強かったり、人によってはやらされ仕事だけで毎日深夜になるとかですね。
ただ、「そのなかでうまく泳げたらめちゃくちゃでかい可能性がある」というのがまず官僚としての一番としての魅力があるかなと思っています。
仕事自体のスケールが大きいというのはもちろん、例えば私は社会人2年目で人材室というで、民間で言うと投資的な意味合いの事業になると思うのですが、年間予算30億ぐらいを全国にばら撒いて、外国人の日本に来ている留学生と日本企業の間のマッチングという事業をしていました。
3年後ぐらいに仕分けられたんですが(笑)、非常に感謝されて。「何で仕分けられたの?」ということと、政策が『生まれてから死ぬまでのストーリー』を見ることができました。
官僚になって一番強みになるのは、圧倒的な人脈です。
キャリア官僚って、どんどん偉くなっていく。例えば経産省だと20代で課長補佐とかになるのですが、その名刺を持っていくと、いわゆる大企業の部長や役員とサシで会えるみたいなのができますし、アポを断る人なんてほぼいないんです。
様子見される会話をされることはあるんですけど、そこで「本音を引き出すためにはどうしたらいいか」、そういうトレーニングにもなります。そこで集める年間何百万、何千万の名刺というのは、一生ものの資産になる。
最初の起業した直後の仕事も、今の仕事をやる時のベースも、官僚の時のお付き合いが大きいです。お付き合い頂いていた社長さんとの間で「一緒にやりましょう」ということもすごくありました。
ネットワークは企業とは比べ物にならないぐらい手に入ると思いますね。それが可能性の話ですね。
橋本:なるほど。
角さんにもお伺いしたいです。角さんは20年、ご経験されてきて、地方行政の中でも非常に大変だと言われる部署も経験され、面白さというのを感じられたことはありますか。
株式会社フィラメントCEO 角氏(以下、角):面白さですか。
橋本:はい、それと公務員になることで拡がる可能性とか。
角:可能性ということになるかどうかわからないですけど、基本すべての仕事に法的な根拠があるということなんですよね。
これがいいところでもあり、悪いところでもあるということにもなってくると思います。
公務員って、僕も若い頃に「何かこういうことをやりたいんです」という話をした時に、先輩がこう言うんですね。
「それは法的根拠は何なの」と。
結局、何らかの法的な根拠の下に動く存在であるというのが公務員なんですよね。だからこそ、やること、やり抜くことが保証されているということでもある。逆にやらなくてはいけない責務がはっきりしているということでもある。
そこにやりがいを感じるという方には、すごくいいだろうなと思います。
もうちょっとこの部分の抽象度を高めて考えを深めるならば「そもそも行政とは何ぞや」ということかなと思うんですね。行政という仕事の本質は何か。
僕が20年やって思ったのは、行政の仕事の本質って「揉め事を起こさずに税金の使い道を決めること」なんですよね。それを法律に則ってやっていくということです。
さっきの栫井さんの話は、国だったら税金の使い道の決め方というのが、すごくダイナミックなんですよね。だから、「これはこういうふうに使う」というのがざっとあるんです。
ただ、地方公務員になってくると、ほぼ法律で決まったとおりにやらなくちゃいけないです。地方公務員はどこもお金がないんだけど、高齢者が増えて、医療費が増えて、介護保険料や社会保障費が財政を圧迫して、、、そういう状態ですよね。
ほとんどのお金って、もう使い道が決まっちゃってるんですよね。使い道が決まっちゃっているがゆえに、自由に使えるお金が少ない。
ならどうするか。
ここに知恵の使いどころがあって。ここの限界と可能性というのが表裏一体なんじゃないかなと思いますよね。
公務員だから出来ること、出来ないこと
橋本:ちなみに、それはどうされるんですか。お金がないけれども、何かしなきゃいけないという。
角:「何をまず潰すか」というところから考えます。
自治体の予算要求って、財政当局からシーリング(※)がかけられるんですよ。5%シーリングとか7%シーリングとかあって、「去年の予算要求から5%減らせ、7%減らせ」と。
※価格・賃金、または予算請求(の増し分)の、これ以上高くしてはならないという限度のこと。
角:そうした状態にして調書を持ってこいという話なんですけど。
こうした、「ただでさえ減らさなくちゃいけない」中で、新規事業をやろうとする場合、何かを減らして、そのお金を新規事業の原資として置き換えていくんです。
『スクラップ&ビルド』です。
こういうことをやっていくと、だんだんこっちのお金をあっちに持っていってというやり繰りの力が強くなっていく。
それをやりながら「いやいや、こういう理由で」という理由の付け方ですね。なぜそれが必要なのか。ここの説明がめちゃくちゃうまくなります。
現場感のある話とか、誰がこういう状況でこうやって困っているんだ、というエピソードを入れながら、財政当局に説明しに行くわけですよ。ここの語りがスーッとスムーズに流れるような人と、「おいおい、それはどういうことだ」と引っかかる人がいるんですけど。
ここが上手になっていくということは、ロジックの立て方が上手になっていくということですね。このロジックの立て方というスキルは、どこに行っても使えますよ。
例えば、その後、起業をしてベンチャーキャピタリストからお金を取ろう、お金をもらおうとする。そして、その時に自分のプロダクトがどれだけ優秀なのか。どれだけ世の中に立つのか。同じことをやっていますからね。
橋本:確かに言われるとそうですね。栫井さんも予算が30億というお話もありましたが、予算絡みでそういうご経験はありますか。
栫井:そうですね。予算もそうだし、法律もそうですし。
あとは新しい企画を省庁の中で通していく時、必ず今の課題が何で目的が何で、「How toとしてこういうことをやると響くはずだよね」といったところのロジカルに話す能力、あるいはそこを組み立てる力。
全体としての課題を正しく捉えているかといったところでちゃんとデータを引用できるとか。
そういったところは一貫して大事だなと思います。あとは、そこでボトムアップで着実に積み上げて、決まるところと、上の方の幹部の政治的決着で決まる間でどれだけ楽しめるかという。
大久保:確かに仕事の面白さもそうですし。それを通してご自身が得られたスキルもあると思うんです。
公務員だからできることもあるし、公務員だからできない、公務員ではここまでしかできなかったというご経験もお2人はそれぞれされているのかなと思います。
ここは公務員でないとできなかったというのは、どうですか。栫井さん。
栫井:やはり『でかい絵を描く』みたいなところは、官僚でないとなかなかできないですね。政策ででかいお金を落とすとか、あるいは法律を作るのもそうですし、競合企業同士で一緒にやりましょうと声がけをするのも、国の役割ですよ。
橋本:確かに。
栫井:最近で言うと、業界の中の競合が集まるだけではなく、違う業界を結びつけること。
例えば、スマートシティでは、それがすごく大事なんです。ああいうのって、民間に全部任せると、皆、競争しちゃうので。「誰がプラットフォーマーになって、どこが取るのか」みたいな話にどんどんなっていくんですよね。
それを「ここまでは皆でやる協調領域で、ここから先は競争するところだよね」という設計をして、協議会を率先してやっていくのが、お金を使わなくても官僚ができる本領発揮的なところかなというがあります。でかい絵を描いて、そこに向けて国じゃないとできない最初の仕掛けやビジョン、体制づくりができるのは大きな魅力ですね。
逆にできないと個人的に思っているところは、それを最後まで実行、やりきるところが非常に組織として評価されなかったり、下手だったりします。
橋本:それはわかる。
栫井:予算をたくさん取ってきた奴が偉いとか、法律改正した奴が偉いとなって。
でも、それってあくまで世の中をよくするための手段でしかなくて、お金を使って効果測定をしてKPIを見て「ここはよかった」「ここはよくなかった」、「だから次の年、ここを修正する」、、、世の中をよくするところまでやりきって初めて意味がある税金の使い方になると思うんです。
人事異動もどんどんするし、予算を取る奴は褒められるけど、その後の結果を実行するところは本当に褒められないんですよね。シンクタンクに投げて後はやらせればいいじゃんと、どんどんなっていって。でも、発注側が放置すると絶対にいいことにはならないんですよ。
なので、そこはもっと公務員という組織が評価のあり方も含めて変わっていかなければいけないことでもあると思うし、逆に実行のところは本当になかなか経験できないので、成長しにくいですね。
KPIの立て方、プロジェクトマネジメントの仕方、効率的なチーム組成や権限委任のあり方、そういったところは民間の方が組織としての蓄積がある。
なので、私はもう官と民を行ったり来たりしながら、そこを進んでいるところを行政の中でもインプットしていくところは、本当にこれから大事になってくると思います。
そういう両面があるかなと思います。
橋本:なるほど。
「上手くいかない」から「上手くいく」を逆算する
大久保:角さんはどうですか。
角:今の栫井さんのお話、そのとおりなんですよね。
僕もキャリアの後半、最後の3年間でイノベーション創出支援をやっていた時、具体的にやっていたことは『大阪イノベーションハブ』という行政が作るイノベーションの創出支援施設というのがあるんですが、それを全国でかなり早い内に先駆けて作ったのが大阪市なんですよ。
行政が施設を作る時って、失敗するイメージしかないじゃないですか。だから、僕はそこに異動させてもらって。なぜ、行政の箱物がうまくいかないのかから考えたんですよ。
箱物がうまくいかない理由って、3つあるんですよね。
1つ目は立地。立地が悪い場所が多いんですよ。これは何で箱物を作るのかという、理由のところに原因があるんです。大体、空き地があると、そこに対して市会議員さんとかが「ここに何か作れ」と言うわけですよ。自分の手柄を作りたいんです。そうして圧力に屈して泣く泣く何かを作る必要が出てきて作るじゃないですか。でも、そもそも空き地になってる時点で使い勝手が悪いから空き地になっているわけですよね。そんな所に何か作ってうまくいくわけないじゃないですか。
2つ目は、運営を自分でやらないということ。誰かに任せちゃう。作るだけ作って、誰かに運営委託する。運営委託というのは「これとこれをやって」というのをが決まっていて。それさえやっていたら、お金をもらえる。だとすると、できるだけコストカットしますよね。これは今、指定管理者制度になっているけど、ほとんど同じです。僕は指定管理者制度のマニュアルとか、当時、作っていましたけど。これは使われないだろうなと思っていました。
3つ目は、そこにいきたいという魅力、コンテンツを重要視する視点がないんですね。その場所にいきたくなる理由をつくらなければならないとか、ソフトウェア的なものが大事だという発想がない。この3つが原因でうまくいかないんだと思ったんですよ。
逆に言うと、うまくいかない原因があるのであれば、それをうまくいくようにしてしまえばいいわけですよね。大阪イノベーションハブのときは、立地がたまたまよかったんですよね。梅田の『うめきた』という場所で、非常に利便性の高い場所でした。
橋本:そうですね。
角:2つ目の放り投げちゃう、運営委託しちゃうというところは、僕たちのチーム全員がうめきたのイノベーションハブに拠点を移して、そこでオフィスとして活動することになったので。ずっと見ていられるんですよ。
大体、場所を作った人が一番場所に愛着があって、それを愛していて、「あの時、こういう思いで作った」という風によりよくしていけるわけです。さっきの栫井さんの話と同じですよね。制度を作った人間が一番想いを持っている。
場所を作った人間が一番想いを持っています。
だから、そこに集まって、日々、議論しながらやっています。だから、改善してよくなったんですね。
最後のコンテンツの部分は、自分がコンテンツになっちゃえばいいんだと思ったんですよ。
自分がコンテンツになるためには、何をすればいいかというとイノベーションハブに来てほしいと僕らが想定している人、例えば起業家の卵とか、エンジニアとかデザイナーさんのコミュニティが開催するイベントに片っ端から行って、名刺交換しまくるんですよ。
これは別に業務としてやってるわけではなくて、業務時間外の個人の活動としてやるんですけど、そういうことをやっていると、エンジニアのイベントやコミュニティのイベントで「公務員が来てライトニングトークをさせてくれ」と言ったりすると、「面白い奴が来たな」となるんですよ。
そこで名刺交換をしまくって、Facebookで友達のリクエストをしまくる。そうして、「大阪イノベーションハブでこんなイベントやるよ」「来週こんなイベントやるよ」と発信していくと、それで人が来るようになるんですね。
こうやって自分自身がメディアになっていく。あるいはコミュニケーションのハブになっていく。そういう感覚ですね。これは別に僕の場合はたまたま公務員だったんですけど、公務員でなくてもやろうと思えばできることです。
そういったところ、全然違うところに入っていって、自分の世界を広げつつ、そしてそれを自分の仕事にも活かしていく、今でもそういうことをやっていますね。
橋本:確かに。私もプライベートでいろんな所に出入りしたりします。公務員の名刺って、強いですよね。関心を持ちますよね。
角:与信がありますよね。
橋本:そうです、与信があるんですよ。
角:その上である程度、安定した信頼関係の作り方ができていって、当時仲良くなった方々が今も仕事の仲間になったり。
あるいはもっと言うと、うちの会社に入ってくれたり、というのもある。あるいはお客さんになってくれたり、というのもあります。
人脈と言ってもいいんですけど、それよりももっと信頼関係ですね。本当に顔が見えるような信頼関係。「あいつがこう言っているんだったら、ちょっと話を聞いてみたいな」と思うとか。そういうところのつながりは、ものすごくつくりやすい職場だろうなと思いますね。
橋本:それはまさに栫井さんのお話にも、角さんと共通するところがあったと思います。
単純に名刺を持って「お願いします」と言うだけでは、絶対に信頼関係って作れないじゃないですか。そこに「君とならやりたいな」と思わせるものって、一体何か。どうすればその人が自分の人脈として後々まで援護いただけるようになってくるんですかね。
相手のニーズに向き合わなければ、本当の信頼関係は築けない
栫井:すごく大事なことで、公務員としても大事だし、起業家としてやっていても大事です。ダメな例は、公務員が組織の中で調整された、字がたくさん入ったパワーポイントを持って、印刷して。「今度、政府でこういうことをやることになりまして」と30分ぐらい滔々と語って「ぜひ御社も、ご協力いただきたい」とただ語って帰ってくるだけは最悪です(笑)。
大久保:ダメな例?
栫井:ダメですね。それが予算を配るとか、そういう話があれば企業も一定のお付き合いはして、情報はとりあえず取っておくかとなるので、それなりにいい感じに聞いてくれるんですけど。
その企業の人がその時にどう思っているかと言うと、「まぁ、付き合うか」とか「この人は俺の方に向き合ってはいないな」と取っちゃうんですよね。
どうやったら次にまた会いたい人になってもらえるかは、相手のニーズに向き合えるかどうか、というのがものすごくあって。
あなたの会社は何をしている会社で、どんなビジネスでこれからどういうふうに広げていきたいのか。あるいはあなたという個人は、何でこの官僚や社会の時間を作ってくれて、そこにどんな興味があるんですか、といったところをあえて質問して、そこを聞いていって。
「それだったら、このミーティングのゴール、あるいはこのミーティングの先のプロジェクトとして、こんなところまで一緒にできたら、会社にとってもあなたにとってもプラスですよね」というところをうまく相手のニーズに合わせて提案していけるような会話だったり、そこの企画力があるかどうか。
これは営業のスキルと全く一緒なんです。
橋本:そうですね。
栫井:これは公務員、マジで下手なんです。
それができるようになると、めちゃくちゃ強いし、それをすることで「この公務員の人は、また部署を異動したとしても、新しい形できっと僕の方を向いてくれるだろうな」と「一緒に面白いことができるだろうな」ということになるんですね。
なので、相手のニーズに向き合うということは、公務員であっても、他の場所であっても、絶対にやった方がいいです。それをすることによって、人との一生ものの信頼関係がどんどんできていくなと思いますね。
大久保:公務員というお立場が、本当はそうあってほしいもので、私たち国民だったり、市民だったりのニーズだったり「こうやっていくと、こうよくなりますよ」ということを提案してくれて、導いてくれるお立場であってほしいという気がしているんですね。
一般的な立場で見ると。
橋本:そうですね。
大久保:本来であれば、ニーズを汲み取る力だったりは、お持ちの皆さんがいてくださって、「やってください」と単純にすごく思うんですけど、それは別のお立場の方がいて、予算があって、資料があって、それに基づいて動かなきゃいけないとなると、また難しかったりします。
栫井:そうですよね。
この後、角さんからもすごく現場感のある話があると思うんですけど、私から見えているところでいうと、さっきの箱物もそうなんですけど、法律も予算も全部そうで、最初にこれをやろうと思った人は、めちゃめちゃ想いがあるんです。
大体、1〜2年でその人は異動してどこかへ行っちゃうんですよね。
後任の人は何を言われるかというと、「この法律はいつ改正して、こうすることになっているからよろしく」と言われて、「これは何のためにやるんだっけ」と、どんどん忘れ去られたままプロジェクトが動いていくんです。
そうすると、それを改正することや稟議を通すことがどんどん目的になってしまって、誰のどんなニーズのためにやるのか振り返る余裕もどんどんなくなって、とにかく目先の「国会を通すぞ」と視野が狭くなり、そういうところが忘れ去られてしまう。
橋本:タコツボ化です。
大久保:まさにタコツボ化。角さん、どうですか。
角:面白いですね。
さっきの栫井さんの話で、やらされ感の話があったじゃないですか。だから、さっきの後を引き継いだ人たちはやらされ感でやってるんですね。でも、このやらされが一番よくないんですよね。
やらされの反対、対義語って何か。
みんな、『やりがい』と言うと思うんですけど。やりがいではなくて、僕はやらされの対義語は、『腹落ち』だと思ってます。
腹落ちに必要な『ストーリーの抽出力』とは
大久保:腹落ち?
角:「腹落ちをしてやるのか」ということですよね。
言われたからやるんじゃないんです。言われたことであっても、自分がそこで腹落ちをするんです、無理やりでも。そして、腹落ちをするために何がいるのかと言うと、それは誰が困っているのかということを感じ取って、いろんな立場の人たちの置かれた状況を思いやって寄り添って考える力ですね。
これが、行政の本質。
さっき言っていた揉め事を起こさずに税金の使い道を決める。そうすることを考えると、当然ながらさまざまな人々の立場を思いやる必要が出てきますよね。それをトレーニングしている人かどうなのかで、明らかに違ってきます。ここができている人であれば、ちゃんと腹落ちしますよ。
橋本:確かにそうですね。
角:それだけじゃなくて、さっきの説明のところも言われたロジックをそのまま使うとか、ありえないですよ、僕からすると。
そんなんじゃなくて、もっと自分で感じるんですよ、
いろんな人の気持ちを感じて。そして日々、見聞きするさまざまな事柄、さまざまな事件とかあるじゃないですか。そういうところからストーリーを抽出して自分で描くんですよ。そういうストーリーの抽出力みたいなもの。
そういうのがあって、そしてさらに言語化する力。
言語化して、可視化して、自分のメッセージを伝える力ですね。そういうのがセットになっていると、日々の仕事にやりがいを持てるようになりますね。そもそも自分が腹落ちできているし。
大久保:確かに就活を通じて学生の皆さんはやりがいという言葉にすごく囚われるんですよ。
しかも、先輩社員にも「やりがいは何ですか」と聞く学生がすごく多くて。だから、やりがい搾取じゃないですけど、やりがいってやっていくうちに感じることなんだけど、やりがいって何だろうを先に見つけて、そこに自分を合わせていくという学生も多い気がするので。
腹落ちしていくという話はすごくそれが伝わったらすごくいいのになと思いました、学生の皆さんに。
橋本:そうですね。私も「やりがいは何ですか」と聞かれたら、「そんなの自分で考えろ」と言ってますよ。それは私の中のやりがいはあります。でも、それが皆さんにとってのやりがいになるかどうかは別問題なんですよね。
なので、「自分で最後に言葉を見つけて、自分の中で腹落ちしていかないと納得できないですよね」ということなのかな、、、というのを聞いていて思いました。
大久保:すごく思いました。
ありがとうございます。そしてまずこれが1つ目のテーマでした。
橋本:まだ話を続けたいぐらいなんですけど。
大久保:でも、これでもう1時間経っちゃうという、、、濃密な時間なので。
では、2つ目のテーマです。
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・記事協力:人事院
・ライティング:mizuki
・編集・デザイン:深山 周作