この記事の目次
長野県が主催(運営事務局:株式会社Publink)する、長野県内の市町村が抱える課題を、多様な企業とのオープンイノベーションによって解決する取り組み「チャレンジナガノ2.0」」。
R3〜R6の4年間累計で594件の応募があり、288件のマッチングが成立しました。そして、地場産品のマーケティングや公共交通、六次産業化など、すでにプロジェクト化実績が出ているとともに、様々な分野で多くのプロジェクトが事業化に向けて進んでいます。
2025年2月28日に開催された『チャレンジナガノ2.0 2024 DEMODAY』の様子をレポートしていきます。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。
※記事内の肩書などは、イベント当時のものとなります。
上田市:上田市の日本遺産を活用した地域活性化
上田市 文化政策課 弓掛 氏(以下、上田市 弓掛 ):
上田市文化政策課の弓掛と申します。この度上田市では、上田市の「日本遺産を活用した」観光誘客と地域活性化ということで、チャレンジナガノに参加させていただきました。

上田市 弓掛:
まず上田市の概略です。上田市は、人口約15万人で、長野市、松本市に次ぐ県下第3位の自治体です。場所は長野県の東側、軽井沢町と長野市のちょうど真ん中です。
本州で一番雨が少なく、首都圏からのアクセスも良好で、観光資源も豊富です。上田市の観光資源については、菅平高原や美ヶ原高原、千曲川、真田氏ゆかりの観光スポット、信州の鎌倉と呼ばれる塩田平や、私鉄の別所線などです。


上田市 弓掛:
今回の上田市の課題においては、「日本遺産を活用した」という部分が重要になります。日本遺産という認定制度の認知度が高くないという現状を踏まえ、これまで上田市の日本遺産の魅力を伝えるために、本やカルタ、擬人化キャラクターのほか、上田市の日本遺産をテーマに10本の短編小説を制作し、PRツール、PRコンテンツを増やし、ブランディングへの活用を模索している状況にあります。




上田市 弓掛:
なお、公募の時点では未完成でしたが、この短編小説については、先月ようやく短編小説集という形で1冊の本として発売するに至りました。

上田市 弓掛:
このような現状を踏まえ、日本遺産という素材を、おいしく料理してほしい、魅力的なものにしてほしいということで、マッチング企業様を募集いたしました。

上田市 弓掛:
素材の活用例としては、これまで制作してきたコンテンツを生かして、二次創作に発展させることを想定しつつ、これらに限らず、独創的でわくわくするような企画を求めました。
そして、日本遺産をわくわくできるようなものにしたい企業様、地域プロデューサー、地域プレイヤーになりたい企業様とご一緒したいということで、その上で、前提として、基本的には委託や補助を受けるのではなくて、自社ビジネスとして推進していただくことを想定しているということをお伝えさせていただきました。


上田市 弓掛:
マッチングする上で、ご覧のような上田市のアピールポイントも紹介させていただきました。日本遺産の活用が広まることで、地域の文化財を地域の宝として大切にしていく街を目指していますということをお伝えして、マッチング企業様を募集したところでございます。


上田市 弓掛:
その結果、15社様からご提案いただきました。そのうち、オンラインミーティングを実施した会社様が5社。重点推進枠として定期的なミーティングを実施することとした会社様が2社。計7社とマッチングしまして、今後も関係を継続していく予定の企業様は4社という状況です。

上田市 弓掛:
このうち、重点推進枠として選定した2社様についてご紹介したいと思います。まず、共通点として、こちらが求めている会社像に近いという点が挙げられます。

上田市 弓掛:
まず、1社目は、ジオ・マーク株式会社様です。ジオ・マーク様からは、イラスト風デジタルマップの作成と、現地限定のNFTコンテンツの販売による収益化をご提案いただきました。採択理由としては、自立自走に向けた提案内容が具体的であったことが大きなポイントでした。

上田市 弓掛:
続いてアンテナ株式会社様からは、日本遺産関連の情報発信支援、いわゆるICTを活用したウェブマーケティング全般の業務受託をご提案いただきました。採択理由としては、ゴールにも記載のある通り、行政からの業務発注を待つばかりではなくて、上田市内に支社を開設し、上田市内でビジネスを展開することも視野に入れているという点が大きなポイントでした。前半は以上です。

Publink 栫井:
ありがとうございます。ジオ・マークさんお願いいたします。
ジオ・マーク株式会社:上田市日本遺産価値向上のための体験コンテンツ造成・ブランディング事業
ジオ・マーク株式会社 岡崎氏(以下、ジオ・マーク 岡崎):
ジオ・マーク株式会社の岡崎と申します。少しだけ弊社をご説明させていただきます。弊社ジオ・マーク株式会社は、2019年に設立した東京のスタートアップ企業でございますが、事業化してまだ3年少しということで、まだまだ若い企業だと思っています。「地図で移動と体験を最高に」をビジョンに、地図を活用した社会課題解決型のシステムやソリューションを提供しております。


ジオ・マーク 岡崎:
弊社は自治体の観光業を中心にお話しさせていただいておりますので、年々観光業界の回復とともに、地元独自の発信力と対応力を持っていきたいという声をすごく聞いております。こういった中で弊社は、この声に応える地域創生を支えるツール開発に力をいれて、ソリューションを提供しております。

ジオ・マーク 岡崎:
具体的には、地元の調査や魅力発掘という作業で、発信力の強いエリアマップを作っていくところから、コンテンツを造成して、エリア情報のDX、データ基盤の構築などもやっております。
それから、作られたデータ、保存されたデータを活用した、AIによる翻訳や読み上げ機能の実装によって、データ活用していくところから、最後はアクセスの分析等で、この取り組みを持続化していくところまで、トータルでソリューションを提供しております。

ジオ・マーク 岡崎:
具体的な例を少しご紹介します。京都の山科区では、地元の山科区が編纂した地元雑誌をまずデータベース化しまして、それからフィールドワークで町を歩きながら写真を撮ったり、地元の芸術大学と一緒に地図を作ったりすることで、デジタルマップの造成とポータルサイトによる発信まで実現しております。


ジオ・マーク 岡崎:
それから、岡山市では、岡山城と後楽園の2つで、回遊性を向上させたいという課題がありましたので、デジタルマップの造成に加えてスタンプラリーを併設することで、お客様に歩いていただく事業をやりました。
こちらは地元のテレビ局に取り上げられたり、新聞も3社取り上げていただいたりしてますので、高い注目度も出すことができたのかなと思います。
ジオ・マーク 岡崎:
上田市さんですが、今回日本遺産を活用したいと伺っておりました。私も少し調べさせていただきましたが、日本遺産は非常に魅力的で、最近の信仰や町めぐりに非常に適したコンテンツだと思います。

ジオ・マーク 岡崎:
弓掛様のお話にありましたように、スタンプラリーなど色々な取り組みをされておりますが、この取り組みを持続性のあるものに変えていかなきゃいけない、集客に直結させなきゃいけないというところがありますので、そういったところで弊社のソリューションを実装させていただけると良いのかなと思っております。

ジオ・マーク 岡崎:弊社の実績ですが、東京都の文京区で、町の魅力をまとめて、声優による声入れやユーチューバーによるデザインなどを掛け合わせることで、NFTの商品を作る取り組みをやってきました。
この取り組みで、Xによる一定のいいね数を獲得したり、実際に人に町を歩いてもらったり、NFTの商品が販売できたりといったポテンシャルの検証まで終わっておりまして、これを上田市さんのコンテンツにも実装できるんじゃないかという風に考えております。


ジオ・マーク 岡崎:
その他にも、スマホを見ながら町歩きをしてもらったり、多言語翻訳をすることでインバウンドに対応してより多くのお客様に来ていただこう、読み上げ機能を使って外国の方にも案内してみよう、スタンプラリー併設したり、SNSによる発信をしたり、色々やりたいことはたくさんあります。このようなことをやっていこうと思っております。

ジオ・マーク 岡崎:
それから、バス情報の見える化という機能もありますので、上田市内のバス情報、路線情報の見える化も可能であれば取り組んでみたいと考えております。

ジオ・マーク 岡崎:
それを、弊社ポータルサイトも持っておりますので、この「たびrecipe」というポータルサイトで発信することで、お客様に直接届けられるところまでやっていこうというのが計画でございます。

ジオ・マーク 岡崎:
また、NFTの販売だけではまだかなり未成熟な市場ですので、プロモーションを持続していく上では資金が足りなくなることが予想されてまして、ここで今回新しく弊社が開発した、地元情報をデータベース化することで、それをAIによってガイドさせようという機能、これをエンドユーザーに直接販売することで、プロモーションの活動資金に当てようという新しい取り組みも今回上田市で実施していきたいと考えております。
これによって、開発の育成コストを下げたり、労働生産性を上げたりといったところも目指していきたいと思いますし、このガイド機能は既に実証が終わっておりますので、あとは上田市の情報をしっかりと中にいれて実装していくところです。



ジオ・マーク 岡崎:
事業資金に関しましては、観光庁の地域観光魅力向上事業で資金調達をして、実施していこうという計画で上田市さんと進めております。

ジオ・マーク 岡崎:
最後に、現地の課題や可能性を知るきっかけになりましたチャレンジナガノに感謝しております。上田市さんと顔を合わせて議論を重ねることで、より深い企画ができたんじゃないかなと思います。この機会を確実に成果として結実させていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

Publink 栫井:
ありがとうございました。ではアンテナさん、お願いいたします。
アンテナ株式会社:日本遺産のWEBマスターとして戦略的なICT発信を
アンテナ株式会社 吉井氏(以下、アンテナ 吉井):
アンテナの吉井と申します。よろしくお願いいたします。まず弊社のご紹介から始めさせていただきます。弊社はWeb制作会社で、Webマスターの代行とナショナルクライアントのWeb戦略を中心に事業をしています。


アンテナ 吉井:
チャレンジナガノでは、1期目から諏訪市と共に、地域事業者のWebやSNSの支援、情報発信支援を事業化させていただいたり、2期目では115の提案の中で、重点枠で3つの市町村に採択いただいて、いずれも事業化など大きな成果を収めました。


アンテナ 吉井:
弊社が取り組んでいることは主に4点です。1つ目は行政自体の情報発信支援、2つ目は地域内の事業者の情報発信支援、3つ目が発信した情報がインターネット上に流通するように、SEOやSNSを活用した仕掛け作り、4つ目はその仕掛け作りを行政と地域事業者へ分けて行っています。この4点で様々な取り組みをしています。

アンテナ 吉井:
今回の上田市さんの取り組みも、この4点の中から一緒に色々とやらせていただこうという形で取り組みを開始しました。

アンテナ 吉井:
今回の取り組みは、上田市さんの日本遺産を世の中に広めることを主眼としてお手伝いをしています。知名度の低さ、魅力の伝わりにくさ、コンテンツの商業化に課題を抱えていらっしゃいましたので、発信支援とコンテンツ化の両面から支援しようと思っています。

アンテナ 吉井:
具体的には、現在上田市の日本遺産関連のキーワードをネットで検索しても、上田市が誘導したいようなサイトがなかなか上位に出てこないため、意図したようにPRすることができないので、せっかくの良い観光資源が、インターネット上の膨大な情報の中に埋もれてしまっています。
それを弊社の「クラウドWEBマスター🄬」という商品、これはホームページ管理のサブスクサービスですけども、そちらで支援し、サイト内の改善ではなくて、サイトに来る前の導線から改善していこうという取り組みを行います。

アンテナ 吉井:「クラウドWEBマスター🄬」は、制限時間内ならスタッフのプログラマーやデザイナーをなんでも活用できるサービスで、主に地域事業者向けに展開しています。

アンテナ 吉井:
実際にサイトに来る前の導線をどう改善するかというと、例えばどこの市町村でも、観光だと「うちには美しい山がある、いにしえの建物がある」と言われますが、全国規模では京都、奈良、富士山、沖縄などにかなわないことが多いかなと思っています。
それに対して、栗のトゲのように、一部の人にしか通用しなくても、特定の人にはズバッと刺さるようなニッチなコンテンツを量産し、検索結果で一位になれるよう対策していきます。

アンテナ 吉井:
令和6年度は、現状把握としてアクセス解析を実施し、それを元に次年度の改善方針を出すように進めています。
来年度はサイトの効率的な運用と、SEOを活用したサイト流入の最大化をテーマにいろんな取り組みを図っていくのと、他の施策や広告との連動をやっていく予定です。最終的には、地元の事業者との自走や商業化を目指します。

アンテナ 吉井:
チャレンジナガノの支援を受けて、上田市さんの強みを強く感じております。日本遺産や温泉などの観光資源、特に弓掛さんの実行力を非常に強く感じています。
チャレンジナガノに参加して思うのは、行政への提案なのに仕様書がないところが、分かりづらさもあるかもしれませんが、最大の魅力だなと思っておりまして、夢のようなことを語りながら、皆で大きなことをつくれるのがこの事業の大きなメリットではないかなと思っています。
それを、Publinkさんや長野県の皆様が第三者の立場で、タスク管理、スケジュール管理していただきながら進んでいけるのが、非常に大きな魅力だなと思っております。
上田市さんの日本遺産の取り組みは、成果としてご披露できるように努めていきますので、今後ともよろしくお願いします。


上田市のコメント
Publink 栫井:
ありがとうございました。では上田市さん、コメントをお願いいたします。
上田市 弓掛:
進めてみての感想として、良かった点、あまり良くなかった点をざっくりとご紹介したいと思います。

上田市 弓掛:
事務局のPublink様はオンラインミーティングのファシリテーションから議事録作成、ToDoリスト作成や抽出、日程調整等を実施していただいたため、非常にスムーズにミーティングを行うことができました。マッチングに向けたミーティングにおいて、ファシリテーターがいるというのはとても心強く、負担軽減につながったと思います。
長野県の担当者様、Publinkの担当者様の多角的な視点で助言をいただいたり、提案企業の実績などに関しても情報提供いただくなどの支援をいただきました。

上田市 弓掛:
またマッチングに至らないとしても、様々なソリューションがあることを知る機会となり、今後の企画立案、事業計画の参考となりました。
特に企画担当者の目線で言わせていただきますと、様々な媒体を通じていろんな会社様のソリューションに関するご提案やご案内をいただくことがありますが、正直カスタマイズされていないと感じるものもたくさん見受けられます。自治体名とか観光スポット名を入れ替えただけのような資料で提案していただくといったことも見受けられます。そういった営業面で、今回のチャレンジナガノのように、自社のソリューションでどのように個別具体的な課題を解決できるか、こちらの強み、弱みを加味して、どこを目指すかというところまでご提案いただけるというのは非常にありがたくて、とても有益に感じました。
以上、簡単ではありますが、ご報告させていただきます。どうもありがとうございました。


Publink 栫井:
どうもありがとうございました。上田市さんでございました。では、重点推進枠の4つ目にいきたいと思います。