【Politics for Olympic】公営競技・スポーツ振興くじと公共事業の関係について知ろう

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政治とスポーツの関係について政府資料等を読み解きながら解説していく本企画。

今回は、いつもと少しだけ趣向を変えて、大人の嗜みとして少しだけダーティなイメージもある競馬や競艇、スポーツ振興くじなどの「賭け事」と公共事業の関係についてご紹介しよう。

公営競技について知ろう

公営競技とは

まず「公営競技」とは、競馬、競輪、競艇、そしてオートレースの4つを総称する呼び方のこと。これら4つはすなわち「公的な機関が賭博として開催するプロスポーツ」ということになる。

日本では、賭博は基本的には違法行為だ。カジノはもちろん、パチンコも賭けマージャンも、実際の運用はどうであれ「お金を賭ける」という行為が介在すれば、それらは違法行為として罰せられるべきものとなる。

ところが公営競技については、この「お金を賭ける」という行為が法的に認められている。これは何故だろうか?

その答えは、公営競技の歴史にある。そもそも公営競技は、第二次世界大戦からの復興の財源とするために開催されたものであり、現在も客が賭けたお金=公営競技の売上は、様々な形で社会に還元されている。裏を返せば、社会の役に立つお金を稼ぐために運営が認められているから公営競技が存在できている、と言える訳だ。

公営競技の法律と払戻率

公営競技の特徴は、公営で賭博(ギャンブル)を行う以上、一切の不正がない公明正大な運営が求められる点にあると言える。そのため各競技の運営等を規定する法律がそれぞれ存在しており、様々なルールが細かに定められている。

参照:競馬法自転車競技法モーターボート競走法小型自動車競走法

例えば、各法律では売上金に占める払戻金の割合、いわゆる「払戻率」について、下限のラインが規定されている。具体的な払戻率については、各公営競技がそれぞれ、投票券の券種ごとに決めており、例えば中央競馬の場合、単勝馬券は80.00%、WIN5は70.00%となっている。

馬券のルール|JRA

投票券の売上全体から払戻金を客に支払った後に残ったお金、いわば「テラ銭」の部分が、公営競技の運営に使われるとともに、自治体の収益となったり、公共事業等の財源として活用される構造となっている。

公営競技の主催者

先ほど「公的な機関が」と書いたが、より具体的には各地の地方自治体・一部事務組合が主催者(施行者)として公営競技を開催している。

「協議会の概要」(全国公営競技施行者連絡協議会)を参照に作成

一部事務組合とは複数の地方自治体が共同で設置する組織のことで、例えば船橋競馬は千葉県、船橋市、習志野市の3者からなる千葉県競馬組合が主催している。なお、競馬については「中央競馬」と「地方競馬」の2種類に分かれて存在しており、そのうち中央競馬を日本中央競馬会(略称:JRA)が全国10か所の競馬場にて開催する形となっている。

さらに、各公営競技には全国的に統括する組織が存在するほか、中央省庁による管轄が行なわれている。各公営競技で生まれる「テラ銭」の部分は公共事業にも活用されると先述したが、その使い道こそが所管省庁と関係の深い公共事業となっている訳だ。

公営競技の収益の使い道

中央競馬では、収益から運営等にかかる費用を引いた後のお金は国庫に納付される仕組みだ。そして国庫納付金のうち3/4が畜産振興事業に、1/4が社会福祉事業に使われているとされている。令和元年の国庫納付金は約3200億円にものぼっており、大きな財源となっている。

競馬の売上の使い道|マイナビニュース

地方競馬では、収益から運営等にかかる費用を引いた後のお金は、主催者である地方自治体等の収益となり、各種事業に用いられる。令和元年度のデータによると、収益金の額は約56億円と、中央競馬と比べれば大きくはない。一方で使い道は学校等施設21.0%、医療の普及17.8%、社会福祉8.9%、公庁舎施設8.0%などとなっており、幅広い分野で活用されていることが分かる。

みんなのくらしと地方競馬|地方競馬全国協会

その他、まず競艇については、主催者である自治体等における各種事業のほか日本財団へ交付金を支出しており、日本財団では競艇からの収益を基に、海洋船舶支援事業や公益・福祉・ボランティア支援事業を展開している。競輪・オートレースについても同様に自治体等の各種事業のほか、機械振興と公益事業振興に対する補助を行なっている。

施行者関連情報|一般社団法人全国モーターボート競走施行者協議会

競輪とオートレースが行う支援事業|公益財団法人JKA

スポーツ振興くじについて知ろう

スポーツ振興くじとは

次に、同じく公が運営している賭け事である「スポーツ振興くじ」について解説していこう。

スポーツ振興くじ(いわゆるtoto)とは、サッカーの試合結果等を予想して、その的中結果に応じて当せん金を受け取ることができる「くじ」のことだ。

2001年3月から本発売が開始され、当初は国内のプロサッカーリーグ「Jリーグ」のみが対象であったが、2013年からは海外のリーグも対象となっている。ちなみに、2014年および2018年のFIFAワールドカップ開催の際には「ワールドカップtoto」も発売されている。

「スポーツくじ(toto・BIG)について」(日本スポーツ振興センター)より引用

スポーツ振興くじの法律と払戻率

スポーツ振興くじについては「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」という法律にて、運営の内容等が定められている。

ここで気になるのはやはり「払戻率」の割合だろう。

実はスポーツ振興くじの払戻率は「2分の1を超えない範囲内」、すなわち50%以下と定められている。客側から見ると、なんと購入金額の半分以上を「テラ銭」として持って行かれる計算になるのだ。

公営競技は7割以上に設定されているのを考えると、ずいぶん低い割合のようにも見える。

スポーツ振興投票の実施等に関する法律

当せん金付証票法

公営競技とスポーツ振興くじの払戻率が異なる理由については、事業の運営にかかるコストの違いや、いわゆる「的中」した時の払戻金にかかる税金の扱い(スポーツ振興くじは無課税だが、公営競技は課税対象)などが考えられる。

ちなみに、このスポーツくじの払戻率の低さ(=控除率の高さ)は、巷で見かける「お金持ちはくじを買わない」という類の論の論拠にもなっている。

スポーツ振興くじの主催者

スポーツ振興くじは文部科学省が所管となり、独立行政法人日本スポーツ振興センターが運営・販売を行っている。以前は、日本スポーツ振興センターからりそな銀行に委託されて運営・販売されてきたが、2006年から日本スポーツ振興センターによる直営方式が採用されている。

スポーツ振興くじの収益の使い道

スポーツ振興くじの収益の使い道については、スポーツ庁のホームページにて「スポーツ振興投票に係る収益の使途に関する報告書及び大臣意見」という形で公開されている。さっそく具体的な中身を見ていこう。

「令和元年度 独立行政法人日本スポーツ振興センター令和元年度スポーツ振興投票に係る収益の使途に関する報告書及び同報告書に付する文部科学大臣の意見」を参照に作成

助成金額の数字としても最も大きいのは、『地域スポーツ施設整備助成』の76億6104万4千円だ。

こちらは、地方公共団体が所有する公共スポーツ施設の各種整備に対する助成であり、例えば野球場のネット改修や、体育館照明のLED化、グラウンドの人工芝生化、トイレやエレベーターの改修、あるいは施設のバリアフリー化など、さまざまな形の施設整備に活用されている。

普段使っているスポーツ施設で、totoのマークが貼られているのを見たことがある方もいるだろう。

「スポーツ振興くじ(toto)による整備事業」(佐野市)より引用

『スポーツ団体スポーツ活動助成』も件数が多く、金額も大きい。

これは、日本スポーツ協会や日本オリンピック委員会、日本サッカー協会などの国内競技連盟、各都道府県の競技連盟、あるいはNPO法人や一般社団法人のスポーツ団体など、さまざまなスポーツ団体が行なうスポーツ関連活動に対する助成だ。スポーツ大会などの「する」スポーツイベントに対する助成が多いが、審判員育成活動や指導者育成活動のほか、広報誌・パンフレット作成・ウェブサイト立ち上げなどといった広報活動も含まれる。

スポーツ振興くじ助成の使い勝手の良さがよく分かる項目と言えよう。

『東京オリンピック・パラリンピック競技大会等開催助成』も、件数こそ多くないものの金額が大きい。というのも実はこの中には「ラグビーワールドカップ2019大会開催事業」に対する助成が含まれており、その金額はなんと約23億円。一昨年度、日本中を熱狂させたラグビーワールドカップにも、スポーツ振興くじの売上金がしっかりと活用されていた、ということだ。

【道草話】スポーツ振興くじと宝くじ

日本において「くじ」と言えば「宝くじ」が運営されているが、こちらは第二次世界大戦の戦費調達を目的として生まれた歴史があり、現在は各自治体の公共事業等に使われている。戦争にまつわる資金不足を理由として国民からお金を集めるために生まれた、という点においては、公営競技と「宝くじ」は同じような構造を持つ事業という訳だ。

宝くじ、第一号は戦費調達 発売1カ月後に敗戦…速攻で復興資金に|withnews

宝くじの払戻率はスポーツ振興くじと同様、50%以下。私たちのお財布から旅立っていった売上金は、宝くじもスポーツ振興くじと同様に国や地方自治体が事業を行う財源に充てられる。

払戻率の低さはスポーツ振興くじと同様、払戻金が無課税であることや事業運営コストにも起因すると考えられる。しかしなんといっても払戻率50%以下。くじを当てて億万長者、なんて夢のまた夢なのかもしれない。

また、宝くじの所管は総務省である。公営競技や「くじ」には様々な種類があるが、それぞれ異なる省庁が管轄しており、きれいに棲み分けが出来ているという訳だ。

まとめ

今回は、公営競技およびスポーツ振興くじと公共事業の関係について解説してきた。

競馬や競艇、あるいはスポーツ振興くじなどといったいわゆる公営ギャンブルに対して、なんとなくダーティなイメージを持っている方も多いだろう。しかし実際には、公営ギャンブルで得られた大きな収益は、地方自治体の貴重な収益となったり、社会福祉等の公共事業に使われたりなど、私たちの生活をより良くするための財源として活用されているのだ。

大枚はたいて購入した馬券や舟券が一瞬にして紙屑になるのは大変悔しい思いがするが、そうして支払ったお金はきちんと社会のためにもなっている。そう考えれば、あの悔しさもほんの少しだけ和らぐのではないだろうか。

ただし、くれぐれものめり込み過ぎないようにしたい。

引用・参照

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