「SDGsアクションプラン2021」で掲げられた3本柱とは

持続可能な開発目標(SDGs)に関する施策の実施のため、持続可能な開発目標(SDGs)推進本部が設定されている。

推進本部では毎年官邸でSDGsに関する1年間の取り組みをアクションプランとしてまとめ、公式ホームページで公開している。そのプランが「SDGsアクションプラン」だ。

2021年のSDGsアクションプランは「コロナ禍からの「よりよい復興」と新たな時代への社会変革」という副題が付され、新型コロナウイルス感染症による社会的混乱からの復興が目指された。

今回は、「SDGsアクションプラン2021」の内容をもとに、政府がどのようにSDGsによってコロナからの復興を目指しているのか見ていこう。

「SDGsアクションプラン2021」で定められた重点事項

2020年12月21日に首相官邸で続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合が開催され、「SDGsアクションプラン2021」が決定された。

アクションプランでは、(1)感染症対策と次なる危機への備え(2)よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略(3)SDGsを原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出(4)一人ひとりの可能性の発揮と絆の強化を通じた行動の加速という4つの柱が掲げられた。

昨年までのプランとは異なり、新型コロナウイルス感染症からの復興が大部分を占めている。

会合の終盤では菅首相から発言があり、ポスト・コロナ時代を見据えて未来を先取りする社会変革のために本プランを実行していくことが宣言された。

持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合(第9回)

「SDGsアクションプラン2021」の基本的な考え方

2019年9月に行われた国連SDGサミットでは、「行動の10年」として2030年までをSDGs達成に向けた取組を拡大・加速する重点期間として定められた。

その後数か月で発生した新型コロナウイルス感染症は世界に拡大し、SDGs達成に向けた取組の遅れが懸念されている。

本プランではこの認識をもとに、「誰の健康も取り残さない」ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進することの重要性を述べている。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとは、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」社会や体制のことを言い、SDGsにおけるゴール3「健康と福祉」の中でその達成が掲げられている。

本プランでは、このように健康や福祉領域における課題解決を重点事項のひとつとして掲げている。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)

重点事項1:感染症対策と次なる危機への備え

本プランでは、4つの重点事項が掲げられている。

SDGs推進本部「SDGsアクションプラン2021」より一部抜粋

まず初めに、昨年から続くコロナ禍での感染症対策と今後の感染症対策に備えるため、保健医療体制を強化することが掲げられている。

重点項目の1つ目では、感染症への対策を強化するため、治療・ワクチン・診断の開発・製造・普及を包括的に支援し、公平なアクセスを確保する必要性が明記されている。

また、次に来る危機に備えるために、PCR検査や抗原検査等の戦略的・計画的な体制構築や保健所の機能強化が必要という認識を示している。

保健所等の体制強化については、2020年8月28日に行われた新型コロナウイルス感染症対策本部においても触れられており、保健所等の恒常的な人員体制強化に向けた財政措置を検討するという内容が盛り込まれており、同年12月14日に公表された総務省資料「令和3年度地方財政の課題等について」でも触れられていた。

令和3年度地方財政の課題等について|総務省自治財政局

実際に各地方自治体では保健所への人員強化を行っている。

新型コロナ 県が体制強化へ職員を47人増員 9市から応援 /群馬|毎日新聞

重点事項2:復興に向けた成長戦略

重点事項の2つ目は、「よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略」として政府が目指す成長戦略の具体的な取り組みが語られている。

具体的には、①Society5.0の実現、②ESG投資の推進、③科学技術イノベーション(STI)の加速の加速の3点だ。

SDGs推進本部「SDGsアクションプラン2021」より一部抜粋

まず、①Society5.0の実現に関しては、課題となっているデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、誰もがデジタル化の恩恵を受けられる体制を整備しすることが再度表明されている。すべての世代がデジタル化の恩恵を受けられるようにするという政府の目標は、SDGsにおける「誰一人取り残さない」という目標と符合するものだ。

また、②ESG投資はSDGsと親和性の高い投資の考え方である。ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの側面に配慮した企業活動への投資をすすめる動きのことである。この考え方を通じて、企業経営へのSDGs取り込みを促進することが掲げられている。

最後に、③科学技術イノベーションについては、バイオ戦略やスマート農林水産業の推進を基点として持続可能な循環型社会の実現に前進するとした。

重点事項3:SDGsを原動力とした地方創生、経済と環境の好循環の創出

重点事項3では、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」にチャレンジすることで、経済と環境の好循環を作り出していくことが掲げられている。

カーボンニュートラルは、地球上で排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素の量を同程度にする状態のことだ。個の状態を実現すると、地球温暖化の原因の一つとされている二酸化炭素濃度の上昇を抑制することができるとされる。

菅首相はアクションプランの策定に先立ち、2020年10月26日の第203回臨時国会において2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した。

温室効果ガスの排出量削減目標としては、2030年度までに26%削減(2013年度比)、2050年までに80%削減を掲げている。

2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き|経産省

また、令和3年度税制改正大綱においても、ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生として、生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備投資などに税制上の支援を行うことが明記されている。

経済産業省「2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き」から抜粋

重点事項4:一人ひとりの可能性の発揮と絆の強化を通じた行動の加速

最後に、重点事項4については、各分野において女性の参画やダイバーシティ、バリアフリーを推進することで、誰一人取り残されない包摂的な社会を目指すとしている。

また、教育面では「持続可能な開発のための教育(ESD)」というキーワードも重要だ。

ESDとは、環境や貧困、人権、平和、開発などの問題を自らの問題として捉え、一人ひとりが自分にできることを実践していくことで課題解決につながる価値観や行動を生み出し、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動のこと。

これらの学習のあり方はまさにSDGsが目標とする世界の課題とリンクしている。

文部科学省「ESD(Education for Sustainable Development)」より抜粋

SDGsは今後も中長期的に続く世界的な持続可能性への取り組みだ。それだけに、次世代への教育にSDGsの思想を受け継ぐことも大切なミッションである。

引用・出典・参考

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