パネルの側に立つ二人の写真

「出会い」からはじめる地方創生。中野市が模索する、農業×〇〇の答えとは。

「おためし立地チャレンジナガノ」は、長野県が主催(運営事務局:株式会社Publink)する、長野県内の市町村が抱える課題を、多様な企業とのオープンイノベーションによって解決する取り組みです。

今回の舞台は「中野市」。長野県北部に位置しており、果物や伝統野菜を栽培する農業に強みを持っています。本記事では、中野市が2社との協働を通じ、農業の魅力を増幅させていく過程をレポートしていきます。

官民コミュニケーションを行う上での注意点、チャレンジナガノだからこそできたことなども詳しく紹介します。チャレンジナガノ、官民共創にご興味のある方必見です!

担当者の中野市愛に火をつけた、チャレンジナガノとの出会い

―― まずは簡単に(担当者)お二人について、中野市との関わりを中心に教えていただけますか。

臼井さん:チャレンジナガノを担当しています、農業振興課の臼井です。まだ4月にこの仕事を引き継いだばかりで、学んでいる最中です。中野市の魅力はなんと言っても人がいいところだと思っています。

傳田さん:前任者の傳田です。地元が好きで地元で働きたいという思いをずっと持っていて、高校卒業後から中野市役所で勤務しています。

―― 地元愛の強いお二人なんですね。素敵です!では、中野市がチャレンジナガノに挑戦した経緯を教えていただけますか。

傳田さん:市内で農業関連の新しいことをしたいという思いから申し込みを決めました。結果的に13社とマッチングし、2社と一緒にやらせていただくことを決めました。状況としては現在、中野市でのチャレンジナガノは2年目に突入しています。

―― 13社のうち、その2社を選んだ決め手はなんだったのでしょうか。

傳田さん:どちらの企業さんも若年層の呼び込みに力を入れていた点が一番大きかったです。中野市では生産者が高齢化していますし、若い人に来てもらうことが喫緊の課題だと感じています。

―― 市のビジョンと企業の特性がマッチしていたんですね。それぞれの事例についても、詳しくみていきたいです。

CASE1:農業×地域外の若者《株式会社おてつたび》

農業の収穫期を中心に、「お手伝い」として若者を中心とした地域外の人に農業体験をしてもらうマッチングサービス。
昨年度は中野市での受入モデルを構築することを目的に複数農家とのマッチングに成功。冷蔵用ぶどうの仕分け、りんご・伝統野菜の収穫などで受入れの実証実験を行った。
本年度からは本格的にマッチングサービスの活用をスタート。
「お手伝い」に来てくれた人を対象として市が観光ツアーを実施し、地域の魅力を発信

―― 中野市を若者の力で元気にしたい、というコンセプトにぴったりの事業ですね。臼井さん、実際に取り組まれてみていかがでしたか。

臼井さん:今まで自分がやってきた仕事とまったく違う領域だったので、最初は戸惑いもありましたが、新鮮な体験をさせてもらっています。印象に残っているのは、募集ページを作るために農家さんを訪問したときのことです。園地に入るのも初めてで、現場の雰囲気を感じることができました。農家さんもおてつたび担当者の方も人柄が素晴らしく、スムーズに進めています。

―― これまでにはないお仕事を通じて視野を広げていらっしゃるんですね。取り組みの成果や、今後目指していきたいゴールについてもお聞きしたいです。

傳田さん:昨年度は県外から9名の方に参加していただけました。若い人に中野市のことを知ってもらう良い機会になったと思います。最終的には移住地としても候補に入れてもらえれば、これほど嬉しいことはないですね。農家さんからも「写真の撮り方を教えてもらった」「消費者の生の声を知れた」などの声をいただき、お手伝い以上の価値を感じています。

臼井さん:おてつたびさんに関しては今年度も継続が決まっています。募集定員を超える方からご応募をいただき、すでにマッチングも終了しているなど、順調な滑り出しです。市の公用車の痛車で観光地を回る等のコンテンツも工夫しながら、魅力をアピールしていきたいです。

CASE2:農業×最先端IT《株式会社XYZ》

市内の園地などを上空からドローンで撮影し、VRコンテンツを制作
名古屋市内で開催したイベントでVRブースを設置

――特に印象に残っているポイントはありますか?

傳田さん:映像技術について、VRなど、行政ではなかなか実現できないプロのクリエイティブ技術をたくさん使うことができ、新鮮なPRになったかと思います。あとはマスコミに取材に来てもらい、中野市の知名度UPにつながりました。

―― 官民連携ならではのよさが生かされています。逆に苦労したポイント、もっとこうしたかったという点はありますか?

傳田さん:当初の狙いとしてはVRコンテンツを体験してもらい、市のPRに繋げたかったのですが、結果的には子ども達の利用が多かった点です。年齢層を見てみても、若者よりはファミリー層が多かったですね。ただ、VRをお子さんに楽しんでもらい、親世代に中野市をPRするといったように、設備をうまく使えた点はよかったと思います。XYZさんとの今後の関わり方は未定ですが、さまざまな可能性を模索していきたいです。

官民コミュニケーションに欠かせない「異分野理解力」

―― どちらの事例も地域の実情に根ざした素晴らしい取り組みだったと思います。改めて、チャレンジナガノに参加してよかった点、苦労した点はどのようなものがあるでしょうか。

傳田さん:一番は、チャレンジナガノだからこそ出会えた人がたくさんいたことですね。普段出会うことのない人と、分野を超えて多くのことを共有できました。逆に苦労したのは、初年度マッチングの段階で、中野市と企業がやりたいことがマッチせず、打ち合わせが難航した点です。

―― そうした苦労を経て中野市がこうした成功を収められたのには、どんな秘訣があったとお考えですか。

傳田さん:少しでもわからない、うまくいかないというところがあったらPublinkさんに相談して間に入ってもらったり、相談にのったりしてもらいました。元々入札くらいでしか企業の方と関わる機会がなくコミュニケーションに不安を感じていたので、取り持っていただけて助かりました。

―― お褒めいただきありがとうございます(笑)今後中野市として力を入れていきたい領域がありましたら、ぜひ教えてください。

臼井さん:おてつたびさんのサービスを継続していく予定で、もっと多くの農家のみなさんに周知していきたいなと思っています。どんどん使ってもらいながら、農家さんの意見も取り入れてよりよいサービスにしていきたいです。

―― ありがとうございます。最後に、記事を読まれている他の市町村のみなさんに、メッセージをお願いします!

市町村ごとに抱えている課題はもちろん異なりますが、少しでも気になるならぜひやってみてほしいと思います。人、モノ、サービス問わず新しい出会いがたくさんあります。先ほど申し上げたように、企業さんとのやりとりにおける不安はPublinkさんに相談できるので、心配せず挑戦してみてください。