【イベントレポ】2021年最後の裏霞、これからのGovTechや官民連携の進め方|裏霞#12

官×民のオンライン飲みイベント「裏霞」。

今回は年末ということで、さまざまなゲストを招いて自分の取り組んできた事業や行政・政策に対する考え方についてプレゼンテーションが行われた。

今回は2021年最後の裏霞ということで、行政や政策に関心を持つ多くのメンバーと共にカジュアルな議論を交わした。

【今回のゲスト】

  • Code for Japan Make our City統括PM:酒井 一樹 氏
  • Sansan株式会社 公共営業部:稲荷田和也 氏
  • 経済産業省 課長補佐:石原 啓晶 氏(※)
  • 株式会社スタディーズ 代表取締役社長:榊原 啓 氏

※石原 啓晶氏は、急用のため、欠席となりました。

イベントの中では、GovTech、若手官僚の提言、Sansanの人材流動化対策などに触れられたので、その概要を紹介していこう。

※文中、意見にわたる部分は個人の見解です。
※本イベントは、オンラインサロン限定かつチャタムハウスルールにて開催しているため、本記事内では承諾の頂けた発言に限り掲載しております(希望によって記事では匿名化も行っています)。

「GovTech元年」を支えた、経産省の初代デジタル化推進マネージャー

最初のゲストはCode for Japan(CFJ)にてMoC(Make Our City)プロジェクトの統括PMを担当している酒井一樹氏。2016年から2021年まで経済産業省ではじめてのデジタル化推進マネージャーとなり、METI-DXやGovTechを内外から推進してきた。

デジタル庁が創設される以前から、経済産業省ではDX推進体制が整備され、DX室長をトップとした省庁を横断した取り組みがなされてきた。

“酒井氏:当時は大きな柱があって、専門人材の登用、スタートアップ・市民との協業、職員のリテラシー向上という3つに基づいてDXを推進してきました。専門人材の登用は、ビズリーチさんなどを使って登用しましたが、これは当時画期的な取り組みでした。職員のリテラシー向上という面では、総合職の2年次研修にデジタル化に関する研修を盛り込むなどの工夫をしています”

取組のひとつであるgBizIDやjGrantsも経済産業省からスタートして、現在はデジタル庁に移管されている。

また、酒井氏が関わっている自治体と共催した「GovTech Summit」や「GovTech Conference Japan」、「CIVICTECH.TV」についても触れられた。

プレゼンの後半で酒井氏は、当時の取り組みを振り返る。

“酒井氏:その当時は結構グレーな取り組みも率先してやっていまして、BacklogやSlack、Trelloなど、情シスに真面目に話をすると絶対アウトと言われるようなコミュニケーションツールも活用し、先進的な情報交換を行ってきました。今では経済産業省でもBacklogやSlackをユーザー分購入して使っています。2019年はこうしたリスクを取って先進的な取り組みを進めた、まさにGovTech元年でした”

酒井氏は現在、Code for Japan(CFJ)にて、デジタル庁主催の「GovTech Meetup」イベントなどに関わっている。イベントでは、GovTechとは何なのか、どのような先進事例があるのかなどを官民の垣根を超えて議論し、デジタル化に取り組む多くの当事者に有益な情報を発信している。

霞ヶ関の構造改革を目指す「プロジェクトK」

続いて、株式会社スタディーズの榊原氏から「プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)」についての説明があった。

※出典:プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)公式サイト

プロジェクトKは、2003年秋に霞ヶ関の構造改革を目指す若手職員による「新しい霞ヶ関を創る若手の会」として結成された組織であり、国際的に競争力のある政策を立案できるよう、改革を実行することを目的としている。

今回は、プロジェクトKが国家公務員のパフォーマンスを最大化するために行っている提言の内容が紹介された。

榊原氏によると、国家公務員のパフォーマンスを最大化し、国益を最大化するためには、①集合知が発揮される組織体制への転換、②政策形成過程の複線化、③PDCAの徹底と学びの文化の醸成、④生産性を阻害する要因の徹底排除の4つの要素が重要だという。

また、人材育成の観点からは、霞が関の評価の慣習の問題点を指摘していた。

“榊原氏:より良い政策の実現には組織の外からの知見を活かしたいところですが、霞が関の評価体制にも問題があります。と言うのも、民間など外部の組織から来る職員は、制度上、霞が関に元々いた職員よりも、機械的に評価を下げられてしまう。実績で正当な評価をすることによって、リボルビングドアがより推進されるのではないかと思います”

名刺を起点に「関係性を可視化する」、Sansanの取組

Sansanの稲荷田氏からは人材流動化対策についてプレゼンが行われた。Sansanらしく、「名刺を起点」にした取り組みだという。

Sansanでは近年、中央省庁や自治体からもクラウド上での名刺の管理および、部門や世代を跨いだ情報の共有に関する相談が増えていると話す。官公庁職員は定期で人事異動が発生するが、そこで生じる引き継ぎ業務への課題感が背景にある。また、自治体では属人化していた人脈が可視化されることで、企業誘致などの活動においても有効と判断され、2022年度内で5件以上の導入実績が生まれているという。

稲荷田氏は、官公庁に関わる中で、官民を「あっちの人間」、「こっちの人間」という区分けをする必要はないと考えるようになったと話す。

いずれにも熱量を持った人はおり、そうした分断を生むような壁をなくし、協力しあえる取り組みを個人としても行っていきたいと述べた。

まずは腹を割って話すことから

プレゼンの内容を軸にワイワイと談笑の進む裏霞。

「誰が官で」、「誰が民で」といったことは外から見ても分からない

今回ゲストの取組を見ても、近年、こうした官と民を混ぜ合わせる場は増えているように感じる。

Publingual Salonでも便宜上「官」と「民」という2つの言葉を使っている。しかし、その中にも多くの属性がある。例えば、「官」であれば、大きく分けても中央省庁と地方自治体があり、IPAやNEDO等といった外郭団体や議員を含んだ意味合いで使われることが多い。「民」も、事業者や市民、学術機関、NPO団体などがある。

それらは同じ官、民の括りでも習慣の違いや断絶があり、そこに潜む課題をひとつひとつ取組んでいく必要性がある。

重要なのは、それらを同質化させることが望ましい訳ではないということだ。それぞれには役割、性質があり、お互いを尊重し、協調し、強みを活かして、弱みをカバーしていくことが必要なのではないだろうか。

拡げていくには、仕組みも仕掛けも必要になる。
しかし、それは腹を割って話すことから始まる

参加者の交流を眺めながら、そう感じさせる2021年最後の裏霞となった。

(ライティング・編集:江連 良介)