【イベントレポ】BabyTechは、キャズムを超えられるのか|裏霞#11

官×民のオンライン飲みイベント「裏霞」。堅くなりすぎない雰囲気で、ゲストと参加者の交流しながらの議論を楽しむ場。

今回は個人をエンパワーメントする技術に着目し、「BabyTechLab小田原」を進める岡口氏(経産省から内閣府に出向中)をゲストにお招きしています。取組の現状、課題、ビジョンなど、率直にお話いただきながら、結論ありきではなく、現状、課題、将来へのビジョンについて、サロンメンバーと一緒に考えていきましょう!

※本PJは、官民での企画・協業支援を行う「ゼロセク インキュベーションプログラム」から生まれています。

※文中、意見にわたる部分は個人の見解です。
※本イベントは、オンラインサロン限定かつチャタムハウスルールにて開催しているため、本記事内では承諾の頂けた発言に限り掲載しております(希望によって記事では匿名化も行っています)。全内容が気になる方はぜひ下記バナーをクリックして、「パブリンガルサロン」のご入会をご検討下さい。

SDGsを起点としたニーズベースのイノベーションをどう生み出すか

岡口氏から、入省から現在までの取り組みについて、自己紹介を交えながら始まった。

岡口氏のキャリアは経済産業省製造局総務課からスタートする。政策を考える場に自分も身を置きたいと考え、同期や若手を集めて政策検討会を開催すると、日本のイノベーションが生まれない理由をすぐに感じたという。

“岡口氏:日本の産業は色々なものが硬直的な構造になっていて、それゆえにイノベーションが生まれないんだろうなと感じました。規制もそうですが、マーケット自体が硬直的でなかなか新しいものを望まない。あるいは、人材や資金の硬直性もあるんだろうなと。(当日発言から抜粋)”

岡口氏は入省1年目から新興国市場への展開が課題解決の糸口になると考えていた。そんな中、2年目にはアジア大洋州課に異動となり、まさにアジア新興国とのイノベーション競争をどうするかという課題をテーマに新政策に関わった。

“岡口氏:入省2年目、3年目にアジア諸国を見ていて思ったのは、SDGsイノベーションではないですけど、ニーズがあるから新しいものがどんどん生まれていくという現象がアジアにはあるなということです。現金が信用できないからキャッシュレスが流行するなど、ニーズをもとにしたイノベーションができないかなという点を特に考えるようになりました。(当日発言から抜粋)”

入省4年目、5年目は内閣府に移り、主に原子力防災の仕事に就くことになる。しかし、岡口氏はこれと並行して「SDGsを起点としてどうイノベーションを生み出していくのか」という課題意識を持ち、検討を行っている。

岡口氏によると、働けない人に労働環境を提供するような、エンパワーメントに関する取り組みを強化することがこれからの日本社会には求められるという。

岡口氏直近の取り組みである「BabyTech」はBaby(赤ちゃん)とTechnology(技術)を組み合わせた造語であり、少子化に伴う人口減少や若い世代の活躍推進などを目的に、テクノロジーを活用して育児支援を行う製品・サービスのことを指している。

小田原市もこれらの目的から、経済産業省とともに子育て支援や育児・家事効率化のための各種調査や取り組みを行っている。

出典:ベビーテックの活用促進に向けた実証調査を行います(小田原市)

子育て支援サービスへの不安が高い日本の家庭

続いて、岡口氏により日本の育児環境の現状と課題について解説が行われた。

日本で働く女性は非正規雇用の割合が非常に高く、岡口氏によると、この背景には育児をしながら働くことの大変さにあるという。

“岡口氏:仕事がないから非正規なのではなく、柔軟な働き方を求めて多くの女性は非正規になります。また、非正規を退職する理由も、育児との両立が難しいからというものがあります。正規雇用の夫婦が二馬力モデルで働くためには、ボトルネックになっている育児の負担軽減が必要不可欠です。(当日発言から抜粋)”

より大きな課題として「日本型雇用」からの転換がある。ジェンダーギャップの改善のためにも、いわゆる「男性が働き、女性が育児する」という旧来型の考え方に基づく雇用を転換していかなければならない

また、日本では外部の育児サービス利用率が2018年時点で6.8%と低い。米国の研究では廉価な家事代行サービスの供給を増やすことが出生率にプラスの影響を与えることが指摘されており、今後日本でも同様のサービス供給を増やすことが重要だ。

このような多くの課題が山積する中、日本でも米国に遅れてBabyTechの広がりが見られるようになった。例えば、子どもの見守りや遊び・知育、睡眠などの育児・家事負担の軽減や、保育園のIT導入など行政サービスの利用改善がこれに該当する。

BabyTechLab小田原では、デジタル化によるまちづくりを推進する小田原市と連携したBabyTech事業者の実証実験を通じ、BabyTech導入の効果や課題、自治体との連携意義について調査している。

2021年度では、当事者の課題を家庭、コミュニティ、行政などそれぞれで明確化し、育児支援サービス利用の不安を解消することを目指した。

BabyTechの目的は「誰でも利用できるようにすること」

サロン会員①:BabyTechもそうですが、そもそも男性も女性も、働いている中で20代の前半で子どもを産もうという風にはならないのが現状だと思います。30代前後で第一子となると、なかなか第二子、第三子といかないので、出生率が2.0を超えるというのは相当厳しいんだろうなと思います。

例えばうちはキッズラインを使わないんですが、それは親がリスクを感じてしまうというのもあります。そのリスクを下げるために、キッズラインの方が見てくださっている間に、遠隔カメラでその様子が移るなど、こういうものがBabyTechLabに求められているのではないかと感じています。

岡口氏:知らない人に預けることのリスクや、安心・安全をどう担保していくかという点がなかなか実現できなかったことが、まさに日本でこうしたサービスが普及しなかった要因とも言えると思います。

他方で、経産省の知り合いに聞くと、支援サービスがないともはや共働きが成り立たないといった声も聞こえてきます。

サロン会員①:なるほど。あと、費用面ですが、この手のサービスは2年くらいで価格が安くなることが多いのではないかと感じています。そのあたりはどうなんでしょう。

岡口氏:そうですね。アプリなどであればいくらでも使えるんですが、育児支援で人手がいるとなると、どうしても日常使いは難しいことが多いです。

よく言われるのが、お金がある人は使えるが、お金がない人は使えない、所謂金持ち優遇政策のようになっているという指摘です。むしろ逆で、より安くサービスを使えるようにすることが目的です。

サロン会員②:育児であるのは、女性があくまで主体で、男性はどうしてもお手伝いのようになってしまうという点です。ある高校生のプレゼンに立ち会ったことがあり、そこでは男性も育児の主体としてタスク管理や評価ができるようなサービスが議論されていました。男性向けサービス、また、海外のサービスなどで良いものはあるのでしょうか。

岡口氏:確かに男性向け、パパ向けアプリというのは少ないように思います。そういう視点も重要だと思います。

また、北欧とかだと国のお金でかなり育児はできてしまうということもあって、逆にあまりサービスの発展はしていないかもしれないですね。

──裏霞ではその後もサロン会員との熱い議論が続く。