【イベントレポ】「行政のデジタル化」の一歩は、何をしたいのかを明確にすること|裏霞

官×民入り混じってのオンライン飲みイベント「裏霞」。

堅くなりすぎない雰囲気で、登壇者と参加者の交流を促進するために毎月1度開催しています。

第9回目となる今回は、加古川市で定額給付金のシステムを1週間で立ち上げ『地方公務員アワード2021』にも選ばれた多田様と、総務省(自治)でこの6月までDX政策を推進し、また『若手が考えるミライの霞が関プロジェクト』で霞が関改革を進める冨永様の2名をゲストにお招きし、自治体DXの本質についてディスカッションしましょう!

※文中、意見にわたる部分は個人の見解です。
※本イベントは、オンラインサロン限定かつチャタムハウスルールにて開催しているため、本記事内では承諾の頂けた発言に限り掲載しております(希望によって記事では匿名化も行っています)。全内容が気になる方はぜひ下記バナーをクリックして、「パブリンガルサロン」のご入会をご検討下さい。

「行政のデジタル化」に関する分断をなくしたい

今回のゲストは、加古川市 スマートシティ推進担当課長の多田功氏と総務省職員・慶応大学SFC研究所所員の冨永真之介氏。

挨拶が交わされた後、まずは冨永氏により、行政のデジタル化に関する話が共有された。

冨永氏はまず、「行政のデジタル化」が社会から要求される一方で、「デジタル化をする側」と「される側」に分断が生じていると指摘する。

確かに「行政のデジタル化」と聞くと、それはデジタル化を担当する限られた政府や自治体職員が行うものであり、我々地域住民は一方的にデジタル化の恩恵を享受する側であると考えてしまう。

しかし、冨永氏によれば、政府が掲げるとおり、行政のデジタル化は「誰一人取り残されないデジタル社会」「人に優しいデジタル化」を推進する必要があり、できるだけデジタル化を「する側」にまわる人数を増やすべきだと主張する。

職場レベルのデジタル化は、管理者から職員に対して一方的に行われるものではなく、事前の情報共有や議論のプロセスの見える化などを通して、「公開型」「共同型」のデジタル化を推進する必要がある。

こうした構造の見直しにより、デジタル化を「特定の部署の仕事」と考える縦割り意識も打破できるかもしれない。

デジタル化の具体的な取り組みに関しては、総務省でも各種計画や制度の実施により旗振り役を担っている。

令和2年12月に出された「自治体DX推進計画」では、自治体システムの標準化やマイナンバーカードの普及促進、自治体行政手続きのオンライン化などのメニューが盛り込まれている。

また、冨永氏は「地域情報化アドバイザー派遣制度」の活用が広がることにも期待しているという。

これは地域が抱えるさまざまな課題を解決するために、最大3日間有識者を派遣し、地方公共団体のICT利活用に助言を行う制度であり、年々利用件数が増加し、2019年には347件にのぼっている。

地域情報化アドバイザーは自治体内部で苦しんでいる職員に対して外部から助言することにより本人たちの活動範囲を広げてあげることができるため、縦割りの打破や組織内部の変革に効果的だという。

冨永氏は今後も制度の利用が広まることを期待していると語り、自身のプレゼンを終えた。

地方公共団体職員のICTに関する課題意識は、その地域の課題に寄り添ったものであると考えられる。そのため地域情報化アドバイザーが職員の支援を行うことは、地域住民の課題解決にもつながるものになると期待できる。

デジタル技術を応用して地域の安全を守る、加古川市の取り組み事例

次に、多田氏により地域情報化アドバイザーの具体的な取り組みについてプレゼンが行われた。

加古川市では現在、「かごがわアプリ」という見守りアプリを普及させている。

このアプリは「見守り機能」をオンにすることで、誰もが見守りボランティアとして参加することができる。

このアプリは見守りタグと連動しており、タグを荷物の中に入れておけば、かこがわアプリや固定式検知器「見守りカメラ」が該当者の居場所を検知し、人々に居場所を知らせてくれる仕組みになっている。

この仕組みは認知症高齢者の見守り対策にも活用されており、認知症となった本人の家族の依頼を受け、見守りタグを無償で配布している。

利用者アンケートでも、7割以上の利用者がサービスに満足していると答えている。

その後、多田氏からは、地域連携や加古川市の合意形成のあり方について紹介がなされた。

加古川市 市民参加型合意形成プラットフォーム – Decidim

デジタル化は横並びでは意味がない、地域独自の課題を見つけることからはじめよう

──2人の登壇者によるプレゼン後、サロン会員による感想や質疑の場が設けられた。ここからは、やりとりを会話形式で一部紹介していく。

サロン会員①:僕のところは職員だけで3万6千人くらいいるので、多田さんと同じことをやろうとしても大変です。

多田さんがすごいところは、デジタル関連の話が集まるだけではなくて、業務に関する具体的な話が多田さんに集まることです。

デジタルはあくまでツールです。やはり、プロパーでずっとやってこられて、市の色々な業務に精通しているからこそ勤まる仕事なのだと思いました。

サロン会員②:デジタル化に関して実力を発揮できる職員がどの自治体にもいれば良いのですが、どうしてもそうはいかない。その場合、総務省がベストプラクティスのようなかたちで各自治体に見せるのか、地域情報化アドバイザーを自治体に派遣するのが良いのか、そこから一歩進んで自治体に伴走して人材を育てるのか。

そのあたり、どれが一番重要になってくるのか気になります。

多田氏:自治体が「何がしたいのか」を理解することが重要です。もし、ツールがなければ、補助金などで購入することはできるかもしれない。ただ、みんなRFIを書けないんですね。

ツールが先か人が先かというと、人が先です。何ができないのかというイシューを立てられれば、詳しい人に聞けばツールは選んでくれるんです。

DXはデジタル(D)ではなく、トランスフォーメーション(X)の方に意味がある。デジタルに重きを置くと、それは単にツールを使っている人になってしまいます。何をトランスフォーメーションしたいのか、そのイシューを立てられるかがDXのカギになります。

サロン会員③:デジタル化に関して、他の自治体と定量的に比べたり、他の自治体に出向して違いを見ることで組織の改革を進めるのが良いのでしょうか。

多田氏:基本的には、他の自治体との比較はおすすめしません。みな1番最初の事例になりたくない一方で、どこかの自治体がやればみんな横並びで真似をします。

でも、それでは全然だめで、自分たちの地域の課題をどう解決するのかを考えられていない。課題も見つけられないし、関係している地域の人たちと対話もしないので、同じ策を講じることになってしまうんです。

地域の対話をオープンなものにし、地域独自の課題を見つけることからはじめるべきだと感じています。

──裏霞ではその後もサロン会員との熱い議論が続く。