【イベントレポ】”よそ者”がもたらす「農」の変革。農村型コミュニティのこれからを考える|裏霞

官×民入り混じってのオンライン飲みイベント「裏霞」。

堅くなりすぎない雰囲気で、登壇者と参加者の交流を促進するために毎月1度開催しています。

第8回目となる今回は、農林水産省の山田貴彦氏、地方移住・まちづくり研究者の伊藤将人氏をゲストにお招きし、農の本質についてディスカッションしましょう!🍺

※文中、意見にわたる部分は個人の見解です。
※本イベントは、オンラインサロン限定かつチャタムハウスルールにて開催しているため、本記事内では承諾の頂けた発言に限り掲載しております(希望によって記事では匿名化も行っています)。全内容が気になる方はぜひ下記バナーをクリックして、「パブリンガルサロン」のご入会をご検討下さい。

農業の働き手として期待されるIターン者と、地元住民の苦悩

──まずはじめに、山田氏はプレゼンを食生活や食料自給率に関するプレゼンを行い、その内容をもとに参加者の間で議論が交わされた。

山田氏によると、日本の農業はいくつかの課題に直面しているという。

1つ目の課題は食料自給率だ。米の食料自給率は1965年は73%だったが、2019年には38%にまで減少している。時代と共に自国で消費する食料を自国で生産できなくなっている。

2つ目の課題は気候変動だ。日本国内の平均気温は時代と共に上昇しており、この気候変動は農作物にも影響を及ぼしている。例えば、水稲の高温による品質の低下、リンゴの着色不良などの影響がある。

また、1時間降水量50mm以上の雨、いわゆる「ゲリラ豪雨」のような現象も右肩上がりで増加しており、これによりキュウリの浸水被害やガラスハウスの被災など、農作物の供給体制に被害をもたらしている。

他にも、農業や林業などの土地利用における温室効果ガス排出の抑制や生産基盤の脆弱化、地域コミュニティの衰退など、農林水産業は多くの課題に直面している。

これらの課題に対応するため、プレゼン後半では農水省の「みどりの食料システム戦略」が紹介された。

この戦略は農林水産業のCO2ゼロエミッション化などに取り組みつつも、イノベーションによる農業の生産性向上などと両立する持続可能な食料システムの構築を目指すもので、先に紹介された農業の課題を解決する糸口になる。

──続いて、伊藤氏からは農業社会におけるIターン者と地元住民のコンフリクトについて事例が紹介された。

農村部における農業の担い手が不足する中、Iターン者の存在が注目されている。しかし、Iターン者と地元住民の間では少なからずコンフリクトが発生する。

伊藤氏が調査している長野県池田町においては、Iターン者と地元住民の間で最も摩擦が生じる部分が農業であった。

例えば、草刈りや有機農法に関する考え方は、地元で長い間農業に関わって来た住民とIターン者では考え方に相違が見られる。

伊藤氏はこうしたの事例を紹介し、政策の動向やPR活動がIターン者と地元住民のコンフリクトに結びついている可能性について指摘した。

農地の変革に「よそ者」は必要、地域住民とどうWin-Winな関係を築くか

──ここからは参加者の間で議論が交わされていく。

サロンメンバー:日本ではCSA ( CommunitySupported Agriculture:地域支援型農業)がまだ普及していないように思います。CSAはその地域の農業を支え、責任を持つことが求められるので、まだまだ受け入れられるには時間がかかるのかなと思いますが、今後の展望について聞かせてください。

山田氏:CSAはあらかじめ消費者が生産者と契約し、お金を前払いして生産物を後から届けてもらう仕組みになっています。個人的には、先ほどの伊藤さんのお話にもあったとおり、昔ながらの農村コミュニティと都市型のコミュニティのコミュニケーションが取れていないという点に農村の課題を感じる。

広井良典さんの「人口減少社会のデザイン」で語られていることですが、農村型コミュニケーションと都市型コミュニティではそもそも役割が違う。例えば、ソーシャルキャピタルについては、農村型コミュニティは同質的な者同士の緊密な繋がるを重視する「統合型」であるのに対し、都市型コミュニティは異質な個人間のネットワーク的な繋がりである「橋渡し型」と定義されています。

これらの違いから、農村と都市のコミュニティではそもそも性質が違うわけで、コンフリクト以前にコミュニティの性質を考えてみる必要もあるのかと思っています。

サロンメンバー:今でも日本では顔の見える生産者と消費者がつながって小さな経済圏を創出する取り組みが行われていますが、いかんせん値段が高いようです。輸送コストの問題なのか、スケールメリットが得られないからなのかはわかりませんが、普通に買うより2,3倍はかかってしまうので、それで諦めてしまう人も多いのではないでしょうか。

山田氏:おっしゃる通りで、そんな離れたところにある農家さんと取り引きをするのではなく、できるだけ近くの農家さんを支援するという観点が生まれれば良いと思います。

実は農家側の問題点も多く、農家が新しい取り組みをしようとしない。これは自分たちのコミュニティを崩したくないというのがまずあると思います。

伊藤氏:地域活性化の文脈で良く語られるのですが、地域住民にはそもそも新しいことに取り組む体力がないという問題点もあります。今の目の前のことをやることだけで精一杯だというものです。

また、先ほどのお話のように、「CSAをやろう」というような新しい発想を思いつく源泉がそもそもないということもあります。この課題を解決するには、田園会議など何かしらの異質性を持った人がその地域の外側から来て、アイデアをもたらすような機会が必要だと感じています。

あるいは、もっとトップダウンで自治体などが強制的に進めていくか。そういったことがない限り、変革は難しいのではないでしょうか。

山田氏:やっぱり「よそ者」が必要だということですよね。

伊藤氏:そうですね、ただこれも課題があります。外側から人を招く場合、地域や自治体の維持、持続を最上位の目的としてしまうと、どうしても長期的にうまくいかないことがある。

どうやってお互いがWin-Winな関係を築いていくのか。これが移住促進政策を展開していく上での大きな問題ですね。

──その後もメンバーは議論を深めていく。

(ライティング:江連 良介、編集:深山 周作)

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