【イベントレポ】官民の人材循環は、”採用だけ”では変わらない?|勝手に有識者会議

デジタル庁への民間人材公募、出戻り官僚やリボルビングドア(※)を主要メディアが連載するなど、今話題のテーマである「官民の人材循環」。

※「リボルビングドア(回転ドア)」とは、一方では立法者および規制者としての役割と、他方では立法および規制の影響を受ける業界のメンバーとの間の人員の移動で、官民の人材循環を表す言葉としても用いられることがある。

今回、霞ヶ関歴20年で内閣人事局などで人事行政に多く携わってきた越尾氏、DX,UX支援をしている株式会社ビービットから経済産業省へ中途採用枠で入省した中舘氏、そしてX氏をゲストに迎え、「官民の人材循環」について建前抜きの熱い議論をしました。

※X氏については、ご本人の希望により所属・発言を本記事内では割愛させて頂いております。

その様子をサマリでお伝えします。

※文中、意見にわたる部分は個人の見解です。
※本イベントは、オンラインサロン限定かつチャタムハウスルールにて開催しているため、本記事内では承諾の頂けた発言に限り掲載しております(希望によって記事では匿名化、発言の削除も行っています)。全内容が気になる方はぜひ下記バナーをクリックして、「パブリンガルサロン」のご入会をご検討下さい。

官民の人材循環の現状

――まず、官民の人材循環の現状について、進んでいるのか、遅れているのか、どのような本質的な課題があるかの議論からスタート。

越尾氏(官民の人材循環の現状として)強制循環が始まりつつある、というのが私の体感ですね。

その意味というのは、離職が増えているということがあると考えています。抜けていく人材をどう埋めていくのかという課題が顕在化しつつあるのではないかと。

公務員ブランドで採用が出来る時代も終わったと思っていて、エビデンスに基づきながらリブランディングを図りつつ、着実な採用戦略を立てていく必要性があります。

また、デジタル庁が分かりやすい例ですが、「そもそも霞ヶ関に居ない人材をどう採用していくか」といったことも必要になってきています。

DXやデータアナリストのような人材や、有名なところだと農水省で『BUZZ MAFF(※)』を推進している広告代理店出身の室長のようなリレーションシップのプロなどを得ていかなくてはという課題が各省庁あります。

※チャンネル登録者数6.87万人(2021/06/19時点)の農林水産省職員が、その人ならではのスキルや個性を活かして、我が国の農林水産物の良さや農山漁村の魅力を発信する動画チャンネル。

中舘氏時系列で見れば(官民の人材循環は)進んではいると思います。

ただ、民間と比較すると、例えば三井物産は3割中途採用で、最先端のAI企業からの登用もしていたり、、、そういったことは霞ヶ関ではまだ起こっていないなという風に思います。

また、(民間とは大きく文化や働き方も異なる部分が多い中で)採用後のオンボーディング支援なども現在は不十分だと感じるので、そうしたところの強化も必要だと思いますね。

加えて、中途採用で来る人たちも元大企業、元公務員など同質性があり、多様性を生むためには異質を受け入れるということもやっていかないといけないのかなと。

根本的なことにも言及をすれば、官と民という区分けだけで思考停止するのではなく、「そもそも、人材循環がなぜ必要なんだっけ?」などの大目的や制度設計の見直しなどの本気度を上げていく必要性を感じています。

栫井(ファシリテーター):チャット欄からも色々頂いていて、(霞ヶ関の中途採用の)求人を見ていてもシニアの超経験者を求めているように見えたり、そうすると「自分は対象外かな」ってなりますよね。

先ほどの「なんで、採用が必要なんだっけ?」という目的は重要な問いかけな気がしますね。

ちなみに、霞ヶ関での中途採用枠って、「労働力が減ったから尖兵を集めたい」みたいな感じだけではなく、「現在いない専門性のある人材を採用する」みたいな違う可能性の登用も内部的な認識はあるんですかね。

実際のところはどうですか、越尾さん。

越尾氏DXの話もあるので、「現在いない専門性のある人材を採用したい」という想いももちろんあります。

ただ、理念はありつつも、ジョブディスクリプションも無くて「即戦略求む」で、入省したら「では、あとは頼む」となりがちなのは課題です。

外から何も分からない状態で入ってきた中途採用枠の方が「なにが分かっていないのか分からない」という状態もあると思っていまして、すると中途採用枠の方も「誰に何を聞いたらいいかわからない」みたいに点在しているような感じになっていると思っています。

中舘氏採用だけでなく、全体の組織システムの再設計を考えないと本質的に意味がないと思っています。

そもそも、「なんで、交流や循環を増やすのか」というと、『質の高い意思決定』のために必要だと考えています。

『質の高い意思決定』のために多様な意見での議論が必要で、そうすると女性幹部の少なさや若手職員の意見をどう吸い上げるか、外国人の登用なども必要ではないかなど、色々なひずみに向き合っていく必要だと思っています。

3年以内に霞が関がやるべきこと

――現状を踏まえて、どのようなアクションが必要かを議論。

栫井(ファシリテーター):霞ヶ関でジョブ型の組織構成できるのかということも課題にありますよね。

現在は、圧倒的に(新卒は)2年間ジェネラリスト教育のように色々な経験をした人が上に行っている感じです。

もし、ジョブ型を取り入れていく場合は、越尾さんが言っていたジョブディスクリプションの用意や短期のプロジェクトにガンガン入れるみたいなプロジェクトベースの働き方も認めていくようなことが必要になりそうです。

人事異動も一斉にではなく、プロジェクト単位で解散して、次のプロジェクトに移るみたいな働き方になったり、、、その辺り、越尾さん(現実味などについて)どう思われますか。

越尾氏ジョブ型にすべきかどうかは、正直私はまだ分かっていないです。根本的にジョブ型でいいと思いつつ、人によって意見が別れるところでもある。

ジョブ型か、そうでないかの神学論争みたいなのは意味ないかなと思っています。

『タコ部屋文化』は、法律つくったら異動するみたいなのやっているので、実はプロジェクトベースで動いているところもある気がします。

すると、いまの制度の中で十分出来ることもあると感じもします。

ただ、私がひとつ思うのは、ハードルを上げ過ぎると「出来ない」という声になってしまうので、いまからでも出来ることを徐々に積み上げて実は変わっていった、、、という変え方もある気がしています。

加えて、ちょっと変わった象徴的なことをするのもいいのかなという気もしてて、地道にやりつつ、分かりやすい例をつくって発信するみたいな。

例えば、農水省でBUZZ MUFFを仕掛けている方は広告代理店出身で、現在は室長でいらっしゃいますが、元々あのyoutuber企画みたいなものは若手の女性職員のアイディアであって、それをいま実行して、界隈でも「いま農水省面白い」みたいな話を聞きますし、それで良い人が集まるという循環を生んでいくのも大事ですね。

栫井(ファシリテーター):オモシロい人はドンドン取り上げていくのは良いですね!

越尾氏いまその辺りは準備中です。

世間的には「中途採用してるのか?」みたいな風にも思われがちなので、ちゃんと発信していこうと取組んでいるところですね。

(チャット欄からの「”良い人”ってどう採用する?」的な盛り上がりを受けて)

栫井(ファシリテーター):”良い人”ってなんですかね(笑)

越尾氏良い人ってマジックワードですよね(笑)

でも、補佐ぐらいまでは伸びしろを見てる気がしますけどね。

決められていないことどう発想してクリアするかとか、折衝能力は概ね高く見ている気がしますね。

栫井(ファシリテーター):色々省庁の募集とか見ていると、そういうポテンシャル的なところのメッセージが伝わっていない感じがしますね。

あと、中途採用した人の専門性を活かした人事配置を出来ているか、みたいなところも課題がありそうですね。

中舘氏折衝能力を高く見るという話もありましたが、(霞ヶ関で折衝能力が重要なのは分かるものの)全員が折衝能力が高い必要があるのかという見方もあると思っていて。

折衝能力が高い人ばかりを採った結果、エッジが効かないというか、折衝能力の高さと専門性の高さが必ずしも一致するわけではないので、そこをある程度分けて評価する、採用することも必要だと思いますね。

越尾氏どっちも秀でている人もいますが、そこは中舘さんはどう思いますか。

中舘氏そういう方もいますが、どっちも秀でている人しか採らないだと、中々採用しにくいし、マッチングしにくいんじゃないかなと。

どっちもあるに越したことはないかもしれませんが、「万人に折衝能力を求めるか」みたいな問題提起ですね。

越尾氏確かに、組織なので個人だけでバランス良く完結している人だけでなく、全体でバランス取れていればいいから、突き抜けた人も採用して、最終的に組織でバランスとるというのはアリですよね。

ただ、採用担当者はバランスの良い人に喰いつく傾向もある気がします。

―以降、交流会に続く。

(編集・ライティング:深山 周作)